コラム

米野球界スーパースターのジーターが満票殿堂入りならず、では5年後のイチローは?

2020年01月23日(木)17時00分

2014年9月、ヤンキース・スタジアムの対オリオールズ戦に勝利して喜びを分かち合うジーター(左)とイチロー(右)Brad Penner-USA TODAY Sports-REUTERS

<イチロー氏の米野球殿堂入りは間違いなさそうだが、注目されるのは野球ジャーナリスト全員からの賛成票を得られるかどうか>

アメリカの野球殿堂は、ニューヨーク州北部のクーパーズタウンという小さな町にあります。ニューヨーク州といっても、マンハッタンからは車で北上して4時間くらいかかる山間部の町です。

この殿堂にインダクト(殿堂入り表彰)されるというのは、アメリカの野球界において最高の栄誉とされています。今年も、その野球殿堂入りする選手への投票結果が発表されました。

殿堂入りの資格というのは、いろいろな付帯事項はあるものの、簡単に言えば「メジャーリーグで10年プレーして、引退後5年が経過している」というのが条件です。この資格を満たした元選手に対して、野球ジャーナリスト(今年の場合は397人)による投票が実施されます。

選考基準は簡単で、その年の得票率が75%を上回れば殿堂入りが決定します。その一方で、5%を下回ると候補から外されてしまいます。5%を超えた場合は、翌年も候補に残ることができますが、10年(10回の投票)が期限とされており、10年経っても75%を超えられなかった場合は、そこで候補から外されてしまうシステムです。

ジーターに入れなかったのは誰か?

記録面での選出基準ですが、一般に300勝、3000安打であれば「まず間違いない」とされる一方で、200勝または2000本安打では「足りない」とされています。その場合は、「MVP級の大活躍をしたシーズン」が2回くらいあるとか、特記すべき功績が必要というのが「相場」です。

1月21日に発表された今年の表彰は2人で、興味深い結果となりました。

1人はヤンキーズの主将を長く努め、通算3465安打(歴代6位)を打ったディレク・ジーター氏で、選考対象1年目で一発受賞となりました。スーパースターですから当然とはいえ、一部に満票での選出が期待される中で、397票中396票の獲得(99.7%)ということで1人が票を投じなかったことが話題となっています。

メディアは必死になって「ジーター氏に入れなかったのは誰か?」という「犯人探し」をしていますが、現時点では判明していません。選手として超一流であることは間違いないので、引退後にマイアミ・マーリンズのオーナーとして、球団のリストラを断行したのが一部の記者には不満だった可能性などが指摘できますが、憶測の域を出ません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story