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麻薬王エル・チャポが、メキシコからアメリカに移送されて有罪判決を受けた理由
裁判を通じて、JGLの複雑な女性関係が明らかになったほか、麻薬の密輸に使用された潜水艦隊が明るみに出たり、その艦隊と米海兵隊が何度も銃撃戦を演じたことが分かるなど、とにかく唖然とする内容の連続でした。また、ダイヤモンドを一面に散りばめたグリップにJGLというイニシャルを埋め込んだハンドガンも提出され、資金力の証拠とされたというニュースも報じられています。
裁判を通じて確認されたのは、JGLとその組織シナロア・カルテルは、国境を越えてアメリカに麻薬を持ち込む際には、壁のない地帯などを違法越境することはなく、基本的には自動車などで税関を突破しているということです。つまり、トランプ大統領の言う「壁」を建設すれば「麻薬をシャットアウトできる」という論理は正しくないというわけです。
この「エル・チャポ」ことJGLですが、死刑は適用されないことになっています。実際は、自身が直接手を下したもの、あるいは部下に命令して行ったものなど全部で、2000~3000人を殺害しているという容疑もあるのですが、オバマ政権に身柄を引き渡すにあたってメキシコ政府は「メキシコは死刑を廃止しているので、アメリカで裁く際に死刑は適用しないで欲しい」という条件をつけており、アメリカはこれを受け入れているからです。
現時点で量刑は決まっていませんが、終身刑、しかも釈放の可能性は一切ないという条件付きの終身刑になる公算が大きいと報じられています。その場合は、コロラド州にあり、俗に「スーパーマックス」と呼ばれているアメリカで最も警備の厳しい刑務所に服役することになりそうです。
この「スーパーマックス」には、連続爆弾犯「ユナボマー」や、アトランタ五輪の爆弾テロ犯である「エリック・ルドルフ」、あるいはオクラホマ爆弾テロの共犯者「テリー・ニコルズ」などが服役しており、JGLはそこに仲間入りするというのです。
その場合、万が一にJGLが脱獄に成功するようでは、アメリカの司法制度も、そしてメキシコとの外交におけるアメリカの威信も崩壊してしまうわけで、この「スーパーマックス」の警備体制が注目を集めることになりそうです。
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