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トランプのエルサレム首都認定は国内向け政策
では、トランプ大統領は本当に親ユダヤ系なのかというと、そこには疑問が残ります。例えばですが、今年の秋には年の瀬に向かって「もっと堂々とメリー・クリスマスと言おう」ということを、大統領は何度も言っていました。
アメリカでは、20世紀後半に「クリスマスを祝わない」ユダヤ教徒の存在を認める行動として「明らかにキリスト教徒と分かる場合」を除いては「メリー・クリスマス」とは言わないし、年末のグリーティング・カードも相手の宗教がわからないとか、ビジネスライクな関係の場合は「シーズンズ・グリーティング(季節のご挨拶)」とするようになっています。
大統領は、「そのような配慮はポリコレ(政治的正当性)だからブッ飛ばせ」ということのようですが、こうした言動を平気でやるところは、ユダヤ系への本物の親近感は持っていないと言われてもおかしくないと思います。
その一方で、今回の「エルサレムの首都認定」という宣言を受けて、パレスチナなどでは反発が広がっており、実際にイスラエルとの間で暴力的な衝突が発生する事態になっています。
例えばパレスチナの中では、西岸地区を拠点とするファタハと、ガザ地区を拠点とするハマスが主導権を争う中で、両者が和解する動きが10月にはありました。仮に、政治的基盤が強いハマスが、テロ戦術を放棄してファタハとの連携を強めて行けば、懸案の中東和平もロードマップの先に見えてくるかもしれなかったわけですが、今回の「首都認定」への反発から、和平は一気に遠のいたと見ることができます。
エルサレムの中でイスラエルとイスラム教徒の間で係争になっているのは「神殿の丘」ですが、その管理を行なっているのは、パレスチナではなくヨルダン政府です。そして、今回の事件は、国王のアブドラ2世以下、親米国家として地域の安定に腐心してきたヨルダンの立場を難しくすることにもなると思われます。
こうした情勢のもとで、以前から予定されていたペンス副大統領の中東歴訪は中止(1月後半以降に延期)されました。ですが、これも「孤立主義」の傾向の強いトランプ支持派には痛手でも何でもありません。
ということで、国際社会から見れば、今回の「アメリカによるエルサレムの首都認定」は暴挙に違いないのですが、アメリカの国内的にはトランプ政権の政治的求心力を後押ししている格好になっているのです。
国連で孤立しようが、その裏に「ユダヤ系への距離感」が見え隠れしようが、まったくお構いなしという感覚がそこにはあります。自分たちの言動のために、中東での危機が深化する動きも出てきているのに、それをまったく気にしていないばかりか、国内の「内向きな政治事情」からは歓迎されているという状況もあるわけで、極めて懸念すべき事態です。
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