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厳密にはまだ始まっていないトランプ政権
Jonathan Ernst-REUTERS
<大統領就任以降もツイートでメッセージの発信を続けて世界を振り回しているトランプだが、閣僚の承認も終わっていない現状では、まだ政府としては何もしていない状態>(写真:メディアやツイッターでメッセージを発信し続けるトランプだが)
ドナルド・トランプ大統領のメッセージ発信が止まりません。「メキシコで自動車工場は建設するな」問題が一息ついたと思ったら、今度は「国境の壁を作る」とか「テロリストへの水責めを復活したい」など、選挙戦を通じて繰り出してきた「放言」を相変わらず続けています。
そのたびに、アメリカのメディアだけでなく、世界が振り回されているわけですが、よく考えてみると、現在の状況は選挙期間中や、就任前の「個人の資格」で「ツイートでのメッセージ発信」をしていた状況と、あまり変わらないのです。確かに宣誓して大統領に就任しましたが、現在はまだ「正式に行政府を動かすにはいたっていない」からです。
【参考記事】ペニャニエトが「国境の壁」建設を阻止するための7つの切り札
まず、閣僚が揃っていません。順に承認されていくとは思いますが、まだ時間がかかります。閣僚が就任していないということは、政権交代に伴って入れ替わる「政治任用」の作業も終わっていないということです。つまり、中央官庁の上級管理職については、まだ人事が固まっていないのです。
アメリカの連邦政府では、主要なポストはすべて「政治任用」かと言うと、そうでもなく、中級以下の管理職・専門職にはオバマ時代から継続して官庁の中枢を担っている人々がいます。そうした人々と、政治任用された新任の上級管理職との間の情報共有や、方針の確認などもこれから始まると思います。これは、軍や諜報機関もそうです。
現時点で、大統領が行っているのは「コメント」を発することと「大統領令」を発することだけです。基本的にアメリカの政治というのは、議会がつくる法律で動いていくものです。新しい議会はすでに動き出しており、大統領も就任しているのですが、主要法案について大統領と議会が議論していくという、「通常の政治」はまだ機能していません。
その一方で、新大統領はメディアとの対立を深めるだけでなく、野党・民主党に対してもすでに「ケンカ腰」です。議会指導者のとの面談に際して「ヒラリー・クリントン氏の選挙不正」について何の証拠もないのに非難し、その後、こともあろうに「捜査開始を指示」するなど、完全に「衝突モード」になっています。この分では、新大統領に対して野党も含めた議会が「100日間は対決姿勢を控える」という「ハネムーン期間」は、今回はなくなりそうです。
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