コラム

ライアンやマケインも敵に回し、ますます孤立するトランプ

2016年08月04日(木)15時40分

 さらに、USAトゥデイ紙のインタビューでは「長女のイヴァンカ氏がセクシャル・ハラスメントを受けたらどう思うか?」と問われて、「その場合は転職を勧める」と答えています。これも、現代の基準からは保守的というより非常識な回答と思われるのですが、これに関してトランプの次男のエリック・トランプが「(姉の)イヴァンカはそんな弱い人間じゃない。そんな仕打ちを受けたら戦うだろう」と語っています。

 そのエリックは別のインタビューでは、「(イスラム教徒の戦没兵士の遺族である)カーン夫妻に対して、父は謝罪していますよ」と、実際は謝罪どころか反撃を続けている父を「かばう(?)」発言するなど迷走しています。トランプ一家の内部でも様々な動揺が生じているようです。

 さらにメディアからは、精神的な問題も含めて「トランプの健康状態には疑問がある」という報道が出る始末です。

 民主党サイドでは、オバマ大統領があらためて「トランプは大統領職に相応しくない」という声明を出していますが、肝心のヒラリーは「問題から距離を置く」姿勢を取っています。これについては、静観しつつ相手の「自滅」を待つ作戦ではないかという解説がされています。

【参考記事】この週末にトランプ陣営が抱え込んだ5つのトラブル

 とにかくトラブルが次々に出てくる何とも異常な状態ですが、世論調査もこうした現状を受けてヒラリー優位の情勢が顕著になっています。

(8月2日発表、NBC・サーベイモンキー調査)
■ヒラリー・クリントン・・・50%
■ドナルド・トランプ・・・・42%

(8月3日発表、FOXニュース調査)
■ヒラリー・クリントン・・・49%
■ドナルド・トランプ・・・・39%

 FOXは元来が「アンチ・トランプ」ですが、それ以前から「アンチ・クリントン」でもあるわけで、基本的に保守層に強い局です。そこで10ポイントの差が付いたというのは、もちろん誤差があるにしても、この時期としてはかなり大きな差と言えるでしょう。

 まだまだ「異常事態」が続くトランプ陣営ですが、本人は演説で「党内の団結は最高の状態だ」と語っています。もはやメディアでは、「トランプの頭の中は一体どうなっているのか?」とか「いきなり放り出す日も近いのでは?」といった、ほとんど末期的なコメントが飛び交っています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インド製造業PMI、3月は8カ月ぶり高水準 新規受

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

ユニクロ、3月国内既存店売上高は前年比1.5%減 

ビジネス

日経平均は続伸、米相互関税の詳細公表を控え模様眺め
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story