コラム

暴言大炎上でも共和党の「トランプ降ろし」が困難な理由

2015年12月10日(木)16時15分

 おそらくはリベラル寄りと思われるキャスターは、「アンタ達保守の権化のような軍事タカ派のグラハム議員もダメと言っている」ことを突きつければ、支持者は「ひるむ」と思っていたようです。ですが、支持者の反応は違いました。1人の女性は興奮して「グラハムとかマケインとか、あるいはブッシュ、チェイニーなんかも全部ダメ。利権団体が後ろにいる腹黒だから」と言い放ったのです。

 政治評論、とりわけ選挙評論の専門家であるNBCのチャック・トッドによると、「トランプは、ブルーカラー保守の大票田を掘り起こして」しまい、彼等は「リーマン・ショック以降の景気低迷の傷が癒えない中で、既成の権威のすべてを疑っている」層だと言うのです。「この人達は、仮にトランプが無所属で出ればついていく」という分析もあります。

 そうは言っても、トランプの発言については「憲法違反」であり「大統領候補失格」だということで、メディアも与野党の政治家も「完全に一致」しつつあります。ということは、このままの状態で共和党の大統領予備選を進行するのもまた、かなり難しい状況となっています。

 とりあえず、来週火曜の15日にCNNと地元ラジオの主催による「共和党候補討論会」がラスベガスで行われます。ここで共和党全国委員会とCNNがトランプの出席を認めるかどうかが注目されます。

 空前の視聴率が見込まれるだけに、CNNとしてはトランプの参加を期待しているかもしれませんが、共和党としては難しい判断になります。もしかするとトランプが先手を打ってボイコットするかもしれません。来週は大統領選にとって年内の大きなヤマ場になると思います。

ニューストピックス:【2016米大統領選】最新現地リポート

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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