コラム

「不人気オバマ」を日本の民主党政権と比較する

2014年10月30日(木)13時53分

 またクルド人はISILの直接の敵であり、アメリカはクルド人救援の動きを見せていますが、アメリカが「助けすぎて」、もしクルド人がホンモノの国家主権を持つような事態になれば、トルコとイランは簡単には承認しないでしょう。その複雑な方程式の中で、オバマはこの問題に「解決策」がないことを知っています。それにも関わらず、国民に対して誠実にこの問題を説明することはできていません。

 ISILが非人道的だと怒る、その一方で「地上軍は出さない」という矛盾した対応が、「実は最善手」だということをうまく説明できていないのです。

 つまりオバマの「不人気」の背景には、「理想を掲げつつ現実に歩み寄ることの必然性」と、「複雑な問題については即時の全面解決を目指さない選択肢が実は最良」であること、この2つが国民に理解されていないという現実があります。

 頭脳明晰なオバマがこのような苦境に陥るということは、現代に大衆政治家を生み出すことの困難を示しているように思うのです。日本の民主党がたどった「失敗」とは比べものにならない深刻な問題が、そこには横たわっています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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