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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
映画『レッドクリフ』アメリカ公開の遅れ
中国の映画史上最大の予算をつぎ込み、東アジア圏を中心に興行的にも成功を収めたジョン・ウー監督の2部作『レッドクリフ』ですが、主要なマーケットの1つと計算されていたはずのアメリカでは、長い間にわたって公開のメドが立っていませんでした。とりあえず、6月に英国で公開がされる直前になって、ようやく「マグノリア映画」の中の一つのブランドである「マグネット・リリーシング」が配給権を取得したというニュースが流れています。
また公開される作品については、既にフランスと英国で公開されている「短縮バージョン」つまり2部作を2時間25分の1本の映画にしているバージョンになるようです。では、どうしてアメリカでの公開がこれほどまでに遅れたのでしょうか?メジャーな配給会社が権利を買わなかったのは何故なのでしょう?ジョン・ウー(呉宇森)監督は『フェイス/オフ』や『M:i:Ⅲ(ミッション:インポシブル3)』などでハリウッドでも人気がありますし、中国を舞台にしたアクション大作はここのところ、アメリカでもヒット作が出ています。そうした要素を考えると何とも不可解な話です。
この点に関しては、全くと言っていいほど報道がありませんが、私の想像では(1)当初は前評判の高さから配給権が高額となり折からの金融危機の中でメジャー配給各社が「引いた」、(2)派手なカンフーアクション映画ではなく、三国志の史実やキャラクターを織り込んでいるが、そもそもアメリカでは三国志はほとんど知られていない、(3)ハリウッドは、中国市場に映画を持ち込んでも半数が検閲にひっかかってしまうため、商売ができずにフラストレーションがたまっている、そうした「映画貿易摩擦」の報復としてメジャーが配給をボイコットした(消極的だった)、というような理由が考えられます。真相は分かりませんが、今挙げたような要素が絡み合ったものという辺りが、当たらずとも遠からじというところではないかと思います。
ちなみに私は2部作のパート2だけしか見ていないのですが、豪華な演技のアンサンブルは堪能しました。中には、オリジナルの配役通り、主役の周瑜役には周潤発(チョウ・ユンファ)、諸葛亮には梁朝偉(トニー・レオン)の方が良かったという人も多いようです。ですが、梁朝偉の周瑜は多少軽いものの繊細さが出ていて良かったですし、金城武の諸葛亮も興味深いキャスティングでした。悪玉の曹操役には渡辺謙さんにオファーがあったようですが、私の好きな役者さんである張豊毅(チャン・フォンイー)がほぼ完璧に演じていたので、これはこれで良かったと思います。
台湾勢も健闘しています。意外だったのは孫権を演じた台湾の人気役者張震(チャン・チェン)が素晴らしかったことで、若さと粗暴さを含む青年君主のスケール感をしっかり出していました。ヒロインには林志玲(リン・チーリン)という人選には驚きました。『ロード・オブ・ザ・リング』のアルウェン役にリブ・タイラーが出てきたのと同じような唐突感がありましたが、タイラーがそれなりに頑張っていたのと同じように、林志玲のファンは喜んでいると思います。
ジョン・ウー監督作品というだけあって、「お約束」の「拳銃ならぬ剣を突きつけ合うアクション」はバッチリ入っていますし、トレードマークの「白い鳩」に至っては、重要な意味を込めて何度も何度も登場するなど、ファンにはたまらないでしょう。それはともかく、実際に公開にこぎ着けたとして、アメリカ市場ではどんな反響があるでしょうか?
まず興行成績に関してですが、中国圏や日本のような大ヒットはやはり難しいと思います。アメリカの映画市場はこうした戦争スペクタクルは大好きですが、やはり三国鼎立という複雑な政治性に関して知識が全くゼロという現実は相当に足を引っぱると思います。アメリカでは『グリーン・デスティニー(アメリカでの題名はクローチング・タイガー&ヒドン・ドラゴン)』が、その繊細なロマンティシズムが受けて大ヒットになるなど、中国映画の「受け方」には予断を許さない面があるのですが、やはり大ヒットはムリでしょう。
ですが、仮に大勢の観客を集めることができれば素晴らしいと思います。映画を通じて曹操嫌いと蜀漢びいきという「善悪の価値観」を理解することから、長い間独裁の下に置かれてきた中国の人々のひそかな反骨精神を知ることは、アメリカ人の中国への理解を深めることになるからです。
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