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安くて便利なデフレ・ジャパン、暮らしやすくて最高......なんだけれどね
安い牛肉もせんべろもある。後は賃金さえ上がれば…… HANNIBAL HANSCHKEーREUTERS
<昔、「高っ!」と驚かれた日本の物価は今や「安っ!」と世界から驚かれている。「暮らしの付加価値」も保たれていてすごいが、もちろん、手放しでは喜べない>
1993年。僕が初めて太平洋を渡ったとき、日本は物価が高い国として世界中に知られていた。
直前の不動産バブルでは「東京の山手線内の土地の合計地価でアメリカ全土の土地が買える」という、少し失礼な試算も有名だった。「銀座の地面に新聞を広げたら、その面積の地価がアイダホ州の一軒家の平均価格より高い」と聞いたときは確かに驚いた。アイダホの草原に人が住んでいるとは!
物価の高いイメージもあったが、お金にあふれているイメージもあった。竹やぶを散歩すればだいたい札束が見つかるということは、日本のニュースを見て分かったので、僕は移住することにした。
それでも、実際に値段を見てひっくり返りそうになった。生ビール700円! コーヒー450円! 映画館のチケット1800円! 『マディソン郡の橋』なんか、日本の映画館で見るよりアイオワ州で本物の橋を買ったほうが安いだろうと、当時思った記憶もある。
2022年。昔、「高っ!」と驚かれた日本の物価は今や「安っ!」と世界から驚かれている。
日本は98年に正式に「デフレ」となった。世界でまれに見る、モノやサービスが徐々に安くなる、とても不思議な現象だ。
当然、安さを売りにする企業も続出した。100円均一の生活必需品店。1000円カットの理髪店。ワンコインタクシー。せんべろの居酒屋。ちなみに、僕もよくお世話になるが、これは「洗剤を飲んでも分からないほどベロが麻痺している人向け」という意味ではない。「千円でべろべろ」の略だ。おいしいよ。
特にうれしかったのは、1000円のステーキ店や3000円の焼肉食べ放題など。吉野家の牛丼並盛は400円から280円に下げられた。マクドナルドのハンバーガーも一時期なんと59円という最安値を記録した!
肉食男子だった僕にとっては最高の環境だ。出身のコロラド州では、そこら辺の牛にカブリつかない限りこんなに手頃なビーフは頂けない。たらふく食べても超安上がり。相変わらず、牛本人にとっては高くつくけどね。
同時期に、さまざまな商品のクオリティーが上がった。テレビが前より大きくて画質もきれい! 洋服が前よりおしゃれで丈夫! 冷蔵庫が前より容量増しの消費電力減! 電球も省エネで長寿命!
モノだけでなく、サービスも安くて便利になった。
何か知りたいときは図書館に行かなくても、検索一つでほとんどの情報が入手できる。ウィキペディアも以前より正確(僕のページに載っている誤りは3つだけ!)。
家で映画を見たいなら、昔はレンタルで1本300円だった映画が今やサブスクリプションサービスで月に1000円程度で見放題。レンタルビデオ店に行かなくていいし、「あのコンテンツ」を閲覧するために他人の目を盗みながら、のれんをくぐらなくて済む。
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