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ジョンソン辞任、あるいはウソがもたらす予期せぬ奇跡(パックン)
ジョンソンはウソによって成り上がり、ウソで自滅した(7月28日、英中部バーミンガムのビジネスフォーラム) Peter Byrne/Pool/REUTERS
<英ジョンソン首相が辞任することになりましたが、ここで彼のウソだらけの半生とそのおかげで訪れたいくつかの奇跡を振り返ってみましょう>
ウソの定義は難しいよね。例えば、この会話の中のウソはどこでしょうか?
先日、ゴルフ場の売店の店員さんに「孫といつも見ています!」と言われた。これはウソに当たるのかな? 「今、この瞬間はテレビ見てないだろ?いつもじゃないじゃん」と揚げ足はとれるが、これはウソではなく、少し大げさに表現しているだけだろう。もちろん、僕も突っ込まずに「本当ですか?ありがとうございます!!」と喜びを伝えた。
「孫は特に『えいごであそぼ』のあなたが大好きです!」とキャディーさんが続いた。これもウソではなさそう。お気持ちだ。気持ちは誰にも否めない。でも、問題が1つ。僕は「えいごであそぼ」に出演していないのだ。厚切りジェイソンさんと勘違いしている! でも、勘違いもウソではない。ウソはその後のやり取りにあった。
僕はまず「ありがとうございます!」とお礼を言ってから「ちゃんとジェイソン君に伝えておきます!」と言ったのだ。これがウソ。「ゴルフコースの売店の店員さんの孫が「えいごであそぼ」でのあなたが好きだそうです」と、ジェイソン君に伝えるつもりはさらさらなかった。
勘違い、データの間違い、誇張、社交辞令、約束破りなどなど、どれも真実と異なるものだから、広義ではウソに当たるかもしれない。だがそれを発する人の善意を信じられるなら、周囲はだいたい許す。
ところが最近、ずっと許されてきた「ウソ」が許されなくなった著名人がいる。それがイギリスのボリス・ジョンソン首相。
嘘で記者のキャリアを築いた
愛らしいキャラも政策実行力もあったためか、昔からジョンソン氏は事実にそぐわない、正確ではない発言を一部から批判をされながらも多くの国民から許されてきた。現に2019年の総選挙では、ジョンソン率いる保守党は30年ぶりに圧勝。大人気だったジョンソンだったが、その時点でも広義の「ウソ」で有名な人だった。
まず、政治家になる前にジャーナリストだったジョンソンは、最初に就職したタイムズ紙の記者として、記事の中の引用をでっち上げたことでクビになった。
その後、デイリー・テレグラフ紙の記者として、反EU(とその前身のEC)派にウケそうな記事で「ウソ」を繰り返した。「EUは曲がりすぎたバナナを販売させない!」とか「EUは肥料のにおいを統一させる!」など、EUの規制を湾曲して伝える記事が特にアンチEUの読者にウケていたようだ。
基本的に、それらはゼロからでっち上げたものではない。例えば、EUは小さい子供が風船を膨らませる際には、窒息の恐れがあるからと、保護者の監督が大事だと注意喚起している。でも、それを受けてジョンソン氏はロンドン市長時代、「EUは8歳未満の子供に風船を膨らませることを禁じている!」と伝えた。つまり、風船の前に妄想を膨らませていたのだ。
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