コラム

水中撮影もライブ配信も可能なダルマ型360度カメラ

2016年09月14日(水)12時10分

<4Kの静止画と2Kの動画を、360度撮影できるカメラ、Giroptic 360cam。アタッチメントも充実していて、手軽にリアルタイムストリーミングも可能。カメラのユニークな進化形だ>

 頭部に装着すると、仮想的な空間の中に入り込んで周囲を見回すことのできるVRゴーグル。この技術は、実はかなり以前からあるものだが、新興のオキュラスが開発した製品にフェイスブックが注目して同社を買収したり、LG電子やサムスン、ソニーなどの家電メーカーが参入したことで、一般にも知られるようになった。

 そのためのコンテンツも、各社独自のゲームなどに加えて、ユーチューブに360ビデオやVRビデオとして一般からの動画データが提供され、フェイスブックも標準でそれらのデータのアップロードや再生に対応。さらには、世界的ストックメディア企業であるゲッティ イメージズもオリンピックのVR撮影に意欲的に取り組み、専門部署まで開設するなど、近年、急速に充実してきている。

【参考記事】モバイル動画の最終形とVRの未来

 多くの人々にとって、グーグルのストリートビューは、最も身近なVRコンテンツの例であり、居ながらにして各地の風景を見回すことができることは、もはや驚きではなく日常の一部となってしまった。

 リオのオリンピックでも、世界最大のストックメディア企業であるゲッティ イメージズが競技のVRビデオ撮影に力を入れるなど、記録を最も臨場感ある情報として残す試みがなされている。

 しかし、その一方で、一般への普及が遅れているのが、そうしたVRフォトやVRビデオを手軽に撮影するためのデバイスだ。

 民生用機器としては、2013年に日本のリコーのTHETAが先鞭を告げて、その後も画質や動画対応などの改良が続けられきたが、ここにきて、ニコンやカシオなど他のカメラメーカーもアクションカメラ系の製品によって市場参入し、徐々に活気を呈しつつある。

 その中で、新興企業ながらユーモラスなフォルムと動画対応の充実、ユニークなアタッチメント類で際立っているのが、フランスのGiropticが開発した360CAM(499ドル)だ。

 120度間隔で配置された3つのレンズを持つ筐体はラバー系素材で覆われ、内部を保護するとともに完全防水性も備えている。そのため、空気とは異なる水の屈折率を補正する専用レンズアダプタを装着するだけで、水中での360度撮影も可能となる。

 また、バッテリーなどを収めたボディの下半分が交換式となっており、電球ソケットモジュールをつければ監視カメラになり、高速有線ネットワークモジュールを装着すればライブ演奏のネット中継が行えるなど、高い拡張性も備えている。

GIROPTIC Lightbulb.jpg

 ファインダーや液晶画面などを持たないのは他のほとんどのVRカメラと同じで、操作や再生はスマートフォンなどのアプリから行われるが、360度撮影では構図を決める必要がなく、必要な部分を後からトリミングできるので、そういう仕様でも問題はないのだ。

 実際に動いている様子は以下の動画で確認できるが、単なるスナップ撮影はスマートフォンで十分となった今、独立したカメラ製品が残っていく道の1つに、この方向性があることは間違いない。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

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