コラム

スマートスピーカーとスフィロ社「スパイダーマン」が拓く未来

2017年07月03日(月)18時30分

Sphero Spiderman review: Interactive toy brings superhero to life:PC Advisor-Youtube

<Amazon Echoが先行するスマートスピーカー市場に、グーグルなどもこの流れに追従し、かつてのスマートフォンの黎明期のような活況を呈しそうな勢いだ。さらに、トイメーカーが、キャラクター性を持たせた製品を発売してきた>

外国からの観光客が日本に来て驚くことの1つに、色々なものが話しかけてくるということがある。たとえば、自動販売機や信号機、風呂、炊飯器、果てはトイレまでが、現状を告げてくるわけだ。

しかし、そんな驚きも、少なくとも英語圏、特にアメリカ人にとっては過去のものとなりつつある。それは、スマートスピーカーと呼ばれる、小型スピーカー型のAI(人工知能)応答システムが、大ヒットを記録しているからだ。

先に挙げた機器のおしゃべりが一方通行で、決まった文言しか再生できない単純なものであるのに対し、スマートスピーカーはユーザーの問いかけに対して、天気から株価、交通情報などまでを答えてくれたり、照明や家電製品のコントロールを声のみで行える。

アマゾンEchoとGoogle Home

現在、市場の約7割を占めるアマゾンのEchoという製品は、2014年の試験販売に続いて、2015年から一般販売が始まり、2016年のクリスマスには品切れになるほどの人気商品となった。

すでにスマートフォンの検索機能などでAIベースの応答システムを実用化していたグーグルもこの流れに追従して、Google Homeという製品を発売している。さらに、マイクロソフトやアップル、ラインなども、それぞれInvoke(発売元はオーディオメーカーのハーマン・カードン)、HomePod、Waveという製品によって、年内にはスマートスピーカー市場に参入することを発表しており、かつてのスマートフォンの黎明期のような活況を呈しそうな勢いだ。

先行しているアマゾンは、すでにカメラ機能やタッチスクリーンを搭載する上位モデルも発売しているが、他社を含めて基本的にはディスプレイなどは内蔵せず、あくまでも音声のみで情報のやりとりを行うところに特徴がある。

一見、画面がないと不自由に思えるかもしれないが、実はその点がこのカテゴリーの製品の最大の特徴であり、メリットなのだ。というのは、AIベースの応答システムは、すでにアップルのSiriやグーグルのGoogle Assistantによって消費者にとって馴染みのある存在となってはいるものの、実際にはスマートフォンに向かって話しかけることに気恥ずかしさを覚えたり、同じ操作や処理を普段から慣れている文字入力やボタン操作によって行なってしまうユーザーも多い。そのため、期待されたほど活用されていない傾向が見られる。



ところが、最初から音声インターフェースしかなければ、人々は積極的にそれを使うようになることをアマゾンのEchoが証明した。1つには、同製品がアマゾンのオンラインショップと直結していて、声で注文ができるという点も興味をひいたものと考えられるが、購入後は製品の注文よりも、日常的な情報の取得や声による音楽再生などに使われる割合のほうが多いとの調査結果もある。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story