コラム

その場で写真印刷できるスマートフォンケース:Prynt

2016年02月25日(木)16時15分

スマートフォンにケースとして装着して利用するフォトプリンタ、PRYNT

インスタントカメラのチェキは、いまでも魅力的

 デジタルカメラ全盛と思われる時代の中でも、富士フイルムのインスタントカメラのチェキは、撮った写真をその場で相手に渡したり、メッセージやコメントを書き込むことのできるタンジブル(実体感のある)な魅力で好調な売れ行きを示している。

 同社は、スマートフォンからイメージをワイヤレス転送してプリントできるスマホ de チェキも販売しているが、こうした動きは、デジタルデータの表示や共有だけでは得られない満足感が、アナログなメディアの中に存在していることを示すものといえる。

 であるなら、スマートフォンから写真を直接プリントすることができれば、デジタルフォトとアナログ写真の両方の魅力が、もっと直接的に得られるのでは...、という発想から生まれたのが、スマートフォンにケースとして装着して利用するフォトプリンタのPRYNT(プリント)だ。

 この製品は、ファックス用紙などに用いられている感熱技術を応用したZink(Zero Inkを略した造語で、ジンクと読む)社のプリントテクノロジーに基づいている。同社は、白黒だけでなくフルカラーのイメージの印刷を、インクリボンなしに用紙自体が発色することによって実現した。そのため、メカニズムをシンプル化することができ、ZInkペーパーと呼ばれる専用紙を入れるだけでフォトプリントが楽しめるのである。

専用アプリと連動して、AR(拡張現実)的な楽しみも

 また、機能的には単純にプリントアウトされればそれで良いのだが、PRYNTでは、ユーザー体験を重視して、ちょっとしたイリュージョンのように見える仕掛けが2つ用意されている。

 1つめは、専用アプリで撮影後にプリント処理に入ると、イメージが画面外にスライドしながら消えていき、その動きに合わせて印刷された実物の写真が現れるという演出だ。 

 そして、2つめは、その専用アプリで写真を撮影すると、同時に短い動画も記録してクラウド上に保存され、プリントされた写真を受け取った相手がスマートフォンのカメラをそれにかざすと、アプリ内の写真が生き生きと動きだすというAR(拡張現実)的な楽しみ方ができることである。

 後者は、たとえば、結婚式などで撮られた新郎新婦の写真から、披露宴のパーティの雰囲気がわかるショートビデオが再生されるような使い方が考えられる。

 残念なのは、ケースとしてフィットさせるために特定のスマートフォン(iPhone 6s, iPhone 6, iPhone 5s, iPhone 5c, iPhone 5, Samsung Galaxy S5 and Samsung Galaxy S4)のみがサポートされ、筆者が愛用するiPhone 6 Plusなどの大型画面の製品には対応していない点だ。

 ただし、無理に対応させても、スクリーンサイズとプリントサイズの違いが大きくなり過ぎて、画面内のイメージがそのまま実体化するような感覚が得られないため、あえてサポート機種を絞ったのは賢明な判断だったといってよいだろう。

プリンタを兼ね備えたスマホケースで、AR機能アプリもある。


PRYNT4.jpg

専用アプリで撮影後にプリント処理に入ると、イメージが画面外にスライドしながら消えていき、その動きに合わせて印刷された実物の写真が現れるという演出も。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story