コラム

株価はいつ暴落するのか

2017年07月25日(火)16時45分

つまり、バブルの定義(私の)は、「他の人が買っているから買っている」状態である。アカデミックに定義すれば、「他人の投資行動に依存して、自分の投資行動を決めている投資家が市場の大部分を占めている状態」となる。

だから、日経平均が1万円でも、アベノミクスの実態がわからなくても、みんなが買い始めたから、自分も出遅れないように、と慌ててみんなが買ったから、それはバブルであり、そして暴騰したのである。

今はどうか。

日銀トレード、と呼ばれる、日銀の動きを予想して売買する投資家は減った。米、欧、日と、金融政策の方向性はほぼ決まり、ニュースにならなくなったから、それで市場に動きは出ないから、それを狙っても値動きで儲けられないからである。

トランプトレードも終わった。トランプは失望に終わる、という当然のファクトがコンセンサスになってしまったからである。

売りのスパイラルはない

したがって、今の足元は退屈な市場だ。日銀は行きがかり上、まだETFを買うことになっているから、淡々と買って入るが、これも定常状態になってしまった。個人投資家は、投資の初心者たちが、遅まきながら、株式投資を始め、恐る恐る、あるいは無邪気に、無難な投資信託や個別銘柄を買っているだけだ。彼らは、愚かなことに、周りを見ていない。手元に資金があり、株式投資でもしないと、と思って買っているだけである。

だから今はバブルではない。バブルではないから、群集心理的に誰かが売ったから売る、下がったから売りのスパイラルが始まる、ということは当面は起きない。

もし、動きがあるとすれば、彼ら素人が驚愕するような、解釈の余地のない、事件か危機である。北朝鮮で戦争が起きるぐらいでは駄目で、核戦争級の事件がないと暴落はこないのではないかと思う。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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