コラム

株価はいつ暴落するのか

2017年07月25日(火)16時45分

これと類似して、バブルは崩壊して初めてわかる、バブルの最中は誰もバブルとはわからないから、バブルは止められない、という似非専門家のコメントがよく現れるが、これは120%誤りだ。バブルのときは、すべての投資家、バブル参加者は、それがバブルとわかっている。いや、むしろバブルであるからこそ、バブルに参加しているのだ。

バブルは儲かる。だから参加するのである。バブルのときは合理的に説明できない水準まで上がっている。だからこそ、さらに上がるのである。不合理なまでに高くなっているから、すぐに下がるので、バブルになど投資するのはおかしい、というのは、バブルも投資もわかっていない人々だ。合理性などというもの、ファンダメンタルズなどというものは、理論上の辻褄あわせで、現実に信じていれば、それは妄想に過ぎない。

投資というのは、上がるものを買う。それだけだ。

そうであれば、今上がっているものと、今下がっているものとで、どちらが上がりそうか、と思えば、前者に決まっている。後者だと思うのは、よっぽどのひねくれものだ。

素直に上がっているから買った人々が、買う決断をした決め手は何か。上がっているから、というのは表面の現象であり、なぜ上がっているのかを、身銭を切った人々は学者やエコノミストと違って真剣に考えている。それはもちろん誰かが買っているからだ。

人がいつ売ってくるか

株価が上がる理由はただ一つ。買いがあるからである。では買っているのは誰なのか。それが上がっている理由を探ることのすべてである。彼らが買っている理由が、ファンダメンタルに比べて割安だから、という理由であって初めてファンダメンタルズは関係してくる。しかし、現実には、日銀は日経平均2万円を割ったら買ってくる、と人々が信じて、2万円を割ったら買う、という行動をしていれば、こちらも同じ行動をとる、あるいは少しだけ先回りをするのが「正しい」(経済学的には合理的といわれないが)のである。

そういえば、経済学の本で「合理的な愚か者」というアマルティアセンの本があったが、文脈は違うが、合理的といわれる人々というのは、だいだい愚かである。現実を、事実を見ていないからだ。

さて、このように事実を常に見て、投資の意思決定をしている「現実の」投資家にとって、もっとも心配なことは何か。それは、今買っている人がいついなくなるか、つまり、今後買う人が出てこなくなること、もっと心配なのは、これまで買った人々が利益確定するためにいつ売ってくるのか、ということである。

これがバブルの基本構造だ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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