日本経済はいつ完全雇用を達成するのか
2018年には完全雇用に到着?
本稿冒頭で述べたように、筆者は、日本経済はその完全雇用に2018年頃には到達できると考えている。その根拠はきわめて単純であり、2013年からの雇用改善ペースをそのまま延長すれば、2年後の2018年には「本来のフィリップスカーブ」が示す完全雇用失業率である「2%半ば」にたどり着くからである。
2013年の年平均の完全失業率は約4%であったが、2014年にそれは約3.6%にまで低下した。つまり、その1年間の雇用改善率は0.4%ポイントであった。また2015年の年平均の完全失業率は約3.35%であったから、前年からの雇用改善率は0.25%ポイントであった。2014年から2015年までに、あの消費増税ショックにもかかわらずそれだけの雇用改善を成し遂げたということは、この0.25%はかなり保守的な数字と考えてよいであろう。この雇用改善ペースが今後2年間続くとすれば、2018年の失業率は、現在の3%から2%半ばにまで低下していることになる。
ただし、このシナリオが実現されるためには、いくつかの前提条件が必要である。その第一は、これからの2年間に、この雇用改善モメンタムを根本から覆すようなネガティブなショックは起きないということである。
2016年11月に生じた米大統領選でのトランプの予想外の勝利という「トランプ・ショック」は、事前の想定を裏切って、幸いにも日本経済に円安と株高をもたらすポジティブなショックとなった。しかし、次に現れるショックが同様なものである保証はない。
【参考記事】トランプで世界経済はどうなるのか 2016.11.18
第二は、たとえば完全雇用失業率を高く見積もり過ぎるなどによって、日銀が先走った金融引き締めをしないということである。
福井俊彦総裁時代の日銀は、2006年9月に、それまで5年超続いた量的緩和政策を解除したが、その時の日本の失業率は4.2%であった。これは、黒田日銀が異次元量的緩和を開始した2013年4月時点での失業率にほぼ等しい。さらに恐るべきことに、速水優総裁時代の日銀がゼロ金利政策を解除した2000年8月の失業率は、4.6%であった。黒田以前の日銀が、いかに「何も考えずにただひたすら金融引き締めに邁進した」のかがわかる。
もっとも、現在の黒田日銀には、そのような失敗を再び繰り返す恐れはほとんどない。というのは、2016年9月21日の金融政策決定会合で新たに導入されたオーバーシュート型コミットメントによって、「実際に2%インフレ率が実現されるまでは金融緩和を維持し続ける」ことが約束されているからである。これは要するに、「日銀は完全雇用が達成されないうちからインフレ率の上ぶれを恐れて金融引き締めに転じるようなことはしない」という意味であり、速水日銀や福井日銀の二の舞はしないという約束なのである。
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