「おもてなし」の精神で受動喫煙防止に取り組む京都
撮影:大村 享
<受動喫煙防止対策の遅れを指摘される日本だが、一気に完全禁煙にするのが最善の解なのか。規制による強制力よりも、官民一体の自主的な取り組みのほうが実効性があるはず――。そんな考えから、市内全域に「店頭表示ステッカー」を広めようとする京都市の挑戦> (写真:京都の老舗旅館「松井本館」の玄関脇に掲げられた「空間分煙」のステッカー)
【シリーズ】日本再発見「日本ならではの『ルール』が変わる?」
10月12日、厚生労働省は受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること)防止対策の強化を目指したたたき台を作成した。施設管理者や喫煙者を罰則付きで規制する内容が盛り込まれており、今後の議論が注目されるが、日本で受動喫煙対策が本格化したのは2003年制定の「健康増進法」がきっかけだ。その第25条が受動喫煙対策について定めており、多数の利用者がある施設の管理者に向け「受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう務めなければならない」と規定している。
以降、全国の公共施設や交通機関が完全禁煙になり、東京都千代田区や福岡市など各地の区市町村で路上喫煙禁止条例が施行された。また民間でもデパートやアミューズメント施設、そして飲食店においても、禁煙や分煙化が急速に推進・拡大された結果、喫煙所を探し求め彷徨う"たばこ難民"なる言葉が生まれるなど、もはやマイノリティである愛煙家にとってさらに肩身の狭い状況となっている。
そんななか、2013年春に京都で"全国初"の協定が締結された。京都府および京都市と、京都府下の宿泊施設や飲食店といった生活衛生業を営む団体(組合等)が中心となって2012年に設立された「京都府受動喫煙防止憲章事業者連絡協議会」(以下、協議会)の3者間において、「受動喫煙防止対策を推進するための連携に関する協定」が締結されたのだ。
この締結が全国初のモデル事業とされる理由は、受動喫煙防止対策に"官民一体"となった取り組みであるということ。そして現在、京都市内のすべての飲食店を対象に「喫煙・分煙・禁煙」を示すステッカーの普及を推進している点が注目に値する。
確かに、従来の受動喫煙防止対策といえば、先に挙げた路上喫煙防止条例など行政による強制力を伴ったものであった。罰則金などの強制力に頼るのではなく、官民一体での試みは他に例がなく、また「店頭表示ステッカー」という小さな一歩とはいえ、市内全域の飲食店に広めようという意欲的な取り組みだ。
先進国の多くが完全禁煙化へと向かうなかで、日本はこれまで受動喫煙防止対策が遅れていると指摘されてきた。そこへ、法律による規制で一気に完全禁煙にするのではなく、現状を維持するのでもなく、いわば「第三の道」を行く試みといえるかもしれない。京都はなぜ、この道を選ぶことにしたのだろうか。