イスラエル閣僚「ガザに原爆投下」を示唆──強硬発言の裏にある「入植者の孤立感」
デモを行うヨルダン川西岸の入植者(4月10日) Nir Elias-REUTERS
<原爆投下を「一つの選択肢」と述べたアミサイ・エリヤフ遺産大臣の思想性を、出自から紐解く>
・イスラエルの閣僚が「ガザに原爆を投下する選択肢」に言及し、閣議出席を禁止された。
・この攻撃的発言は「個人の失言」というより、「祝福も理解もされない」孤立感を深めるイスラエル入植者の声を代弁したものといえる。
・その一方で、「原爆投下」発言は周辺国のイスラエル批判をエスカレートさせており、その影響はグローバルなものになりつつある。
イスラエルの閣僚が「原爆使用」に言及したことで、ガザをめぐる対立と緊張はさらにエスカレートした。
「核保有国」イスラエル
イスラエル政府で聖地エルサレムの文化財保護などを担当するアミサイ・エリヤフ遺産大臣11月3日、ローカルラジオ局のインタビューで「全員を殺すためにガザに'ある種の原子爆弾'を投下することはあるか」と問われ「一つの選択肢だ」と応じた。
イスラエルは冷戦時代から核開発疑惑を持たれてきたが、歴代政権は保有を肯定も否定もしてこなかった。はっきりさせないことが、かえって敵対勢力に対する抑止効果になってきたともいえる。
保有の真偽はさておき、「パレスチナ人全員の抹消」とも取れるこの発言が拒絶反応を招いたことは不思議でない。
発言が明らかになるや、ネタニヤフ首相はエリヤフ大臣の閣議出席を禁じた。ネタニヤフはこの発言が「現実とかけ離れている」「イスラエル軍は民間人の犠牲を出さないよう国際法に則って行動している」と火消しに努めた。
その後、エリヤフはSNSで「'原爆投下'は一つの比喩だった」と述べ、イスラエルの核保有を認めたわけでないとも釈明した。
強硬発言の裏にある孤立感
エリヤフの思想性を一言でいえばウルトラナショナリスト、極右である。これまでにも、国連決議に反する「全パレスチナの併合」を主張するなど、ユダヤ教保守派の多いネタニヤフ政権の閣僚のなかでもとりわけタカ派的言動が目立つ。
その思想性は出自にも関係している。
エリヤフは1979年、ヨルダン川西岸のエルサレム近郊に生まれた。父親は高位のラビ(ユダヤ教聖職者)である。
エリヤフの生まれ育ったヨルダン川西岸は1947年の国連決議でパレスチナ人に割り当てられた土地だが、1967年の第三次中東戦争でイスラエルによって占領され、現在に至る。
占領地に生まれ育った入植者は、最大都市テルアビブなどに暮らすそれ以外のイスラエル市民と比べて、ヨルダン川西岸の占領に固執しやすく、パレスチナ人国家との共存に反対する傾向が強い。パレスチナとの和解は、彼らの存立基盤を失わせかねないからだ。
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