コラム

「チーム地球」の一員としての日本の5つの優先課題──SDGs週間に考える

2020年09月23日(水)17時35分

空港に表示されるSDGグローバル指標(写真はパナマのトクメン国際空港) Susie Hedberg-iStock


・2030年までの中期目標であるSDGsは、世界全体で取り組むべき17の目標からなり、いわば「チーム地球」にとっての課題でもある

・国連のランキング評価によると、日本の取り組みは世界全体で第17位に位置しており、これは決して悪い成績ではない

・ただし、何年にもわたって「重要な課題」と評価される項目もあり、これらは日本にとって優先的に底上げを図るテーマといえる

世界全体で取り組むべき課題のうち、日本がとりわけ手薄と指摘されるのは、貧困と格差、ジェンダー平等、化石燃料の大量消費、生物多様性、そして公正な資金の流れである。

「チーム地球」としての課題

9月18日から26日は、国連のSDGs週間にあたる。最近では鉄道車両などにもSDGsのカラフルなロゴでラッピングが施されたものが各地で登場しており、認知度は徐々に上がっている。

Mutsuji200923_2.jpg

(出所)国連広報センター

日本語で「持続可能な開発目標」と呼ばれるSDGsは、2015年に国連総会で採択された、2030年までに世界全体で取り組むべき中期目標を指す。そこには極度の貧困をなくす、飢餓の撲滅、ジェンダー平等の実現、イノベーションの促進、地球温暖化対策など17の大きなゴールが掲げられ、そのもとに169のターゲットが設定されている。

これらはいずれも世界全体に共通する課題であり、いわば「チーム地球」としての取り組みが求められているものばかりだ。

Mutsuji200923_3.jpg

各国での進捗を測るため、国連は毎年各国のSDGsへの取り組みを評価し、その結果をランキング形式で発表している。7月に発表された今年の順位で日本は世界17位。2016年以来、日本は20位以内に入っており、世界全体でみれば決して悪い成績ではない。

その一方で、例年のように改善が求められ続けている課題もある。下記の表は、この3年間の日本の取り組みに関して「重要な課題(Major challenge)」と評価された項目だ。

Mutsuji200923_4.jpg

これらはいわば日本で取り組みが遅れており、優先的に「底上げ」を図るべき領域といえる。以下で、これらを5つのグループに分けてみていこう。

貧困と格差の悪化

まず、貧困である。日本ではアフリカなどで広くみられる、1日1.9ドル未満の「絶対的貧困層」は稀だが、貧困や格差は相対的なものであり、物価水準などが異なれば、貧困の基準も異なる。

SDGsレポートの日本に関する評価では、「税金徴収や再配分の後の貧困率(所得の中央値を下回る割合)」が3年連続で「重要な課題」となった。日本の約15%という水準は、先進国ではアメリカ(17.8%)に迫るもので、むしろチリやメキシコなど新興国に近い。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パナマ大統領選、右派ムリノ氏勝利 投資・ビジネス促

ビジネス

財新・中国サービスPMI、4月52.5に低下 受注

ビジネス

バークシャー、手元資金が過去最高 第1四半期にアッ

ワールド

イスラエル、アルジャジーラの活動停止 安全保障の脅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story