「チーム地球」の一員としての日本の5つの優先課題──SDGs週間に考える
これに加えて気になるのは、格差の大きさを表すパルマ比率(上位10%が得ている所得の下位40%の所得に対する比率)がこの2年連続で「重要な課題」と評価されたことだ。日本の数値は1.3だが、この水準はアメリカ(1.76)やイギリス(1.52)を下回るものの、先進国のなかでは格差が大きい部類に入る。
コロナのダメージは立場の弱い非正規雇用などでとりわけ大きいため、日本で今後、貧困と格差がさらに悪化する可能性は大きい。
先進国最低レベルのジェンダー平等
次に、ジェンダー平等だ。SDGsレポートでは、3年連続で「議会における女性議員の割合」や「性別賃金格差」が「重要な課題」と評価されている。
このうち、女性議員の割合は10%前後にとどまっており、これは先進国中最下位レベルであるばかりか、ほとんどの途上国と比べても低い水準にある。
これに対して、フルタイム労働者および自営業者のなかでの男女間の賃金格差は24.5%(2020)。これは先進国のなかでも屈指の高水準で、SDGsランキングの首位常連であるスウェーデンと比べると約3倍も大きい。
政府や企業は女性の参画をことあるごとに強調するが、その道のりは遠い。
化石燃料の大量消費
第3に、エネルギーを大量に消費するライフスタイルだ。
SDGsレポートによると、日本に関する評価では、「エネルギー浪費」や「一人当たりCO2排出量」が3年連続で「重要な課題」としてあげられている。とりわけ、日本の一人当たりCO2排出量8.8トンに関していうと、これより上位にくるのは中東などの産油国がほとんどというほど多い。
日本の自動車や家電はエネルギー効率の良さで知られるが、消費の総量が多ければ、いくら効率が良くても追いつかない。
しかも、その多くは石油や天然ガスといった化石燃料で、再生は不可能だ。日本の「再生可能エネルギーの占める割合」もまた3年連続で「重要な課題」と評価されている。
日本ではCO2排出などにかかる税金などが安く、これが欧米と比べて風力や地熱など再生可能エネルギーの利用や、ガソリン車に比べて温暖化に負荷の小さい電気自動車への転換が進んでいないことの一因といえるだろう。
陸と海の生物多様性
第4に、生態系の保全についてである。SDGsレポートでは、日本の「過剰に捕獲された魚介類の割合」は70.8%(2020)で、先進国中屈指のレベルであり、3年連続で「重要な課題」と評価されている。
海に囲まれた我が国では、海の恵みを享受することに慣れ親しみすぎて、それが有限であることへの意識がかえって薄いのかもしれない。
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