「チーム地球」の一員としての日本の5つの優先課題──SDGs週間に考える
さらに今年は、輸入を通じて海外の生物多様性を脅かしていることも「重要な課題」と評価された。つまり、食糧やそれ以外の目的で動植物を輸入するなかで、結果的に海外の生態系に悪影響を与えている割合が高いと評価されているのだ。
また、絶滅危惧種に関するレッドリスト指数も低評価のまま推移し続けている。
公正な資金の流れ
最後に、国際的な資金の流れに関してである。SDGsレポートでは、国内総所得(GNI)に占める政府開発援助(ODA)の割合の低さが3年連続で指摘されている。
西側先進国で構成される開発援助委員会(DAC)では、GNIの0.7%を援助に向けるよう勧告しているが、日本の場合は0.2%にとどまる。金額ベースでいえば、日本の援助額は西側先進国のなかで米・独・英・仏につづく第5位だが、日本よりGDPが小さい独・英・仏よりODAが少ないことに表れているように、その経済規模と照らすと必ずしも国際協力に熱心とはいえない。
これに加えて、金融秘密度スコアの高さも、SDGsレポートで3年連続「重要な課題」と評価されている。金融秘密度スコアとは、銀行の守秘性、企業の情報公開制度、税務当局による納税者情報の把握などによって算出される。いわゆるタックスヘイブンはこれが高いが、日本もそれらに並ぶ水準にある。
シティ大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授は、企業情報の秘匿性を重視するシステムが違法なマネーロンダリングや企業の租税回避の温床になりやすいことから、財政の民主的統制を骨抜きにするばかりか、公正な競争を歪め、貧富の格差を拡大させると指摘する。不公正な資金の流れは、日本ばかりか世界にとっても有害といえる。
ちなみに、日本はイギリスのシンクタンク、タックス・ジャスティス・ネットワークが評価する「金融秘密度指数」の2020年報告でも、世界全体で上から7位の金融秘密大国である。
トレンドを超えて
念のために繰り返すと、日本の評価は全体としては決して低くない。とはいえ、問題がないわけでもなく、ここであげられたのは、指摘され続けてきたものだ。
裏を返すと、これらが改善されなければ今後、世界全体における日本の順位は下がり続けかねない。2017年以降、日本の総合評価は下がり続けているが、これは各国がSDGsに沿った改革を行なってきているからでもある。
日本政府も2018年の「拡大版SDGsアクションプラン2018」を皮切りに、地方自治体、民間企業、大学などに協力を呼びかけている。最近あちこちで目にするロゴの多くは、その考え方に賛同し、普及を図るためのものである。
しかし、企業のなかには既存の取り組みにSDGsのラベルを貼って、いかにもグローバルなトレンドに配慮していますとアピールするにとどまることも少なくない。そうした「格好だけ」を乗り越え、これらの課題に国全体で優先的に取り組めるかは、消費者・有権者のマインド次第ともいえる。日本に暮らす人々がSDGsに関心を向けることは、世界のためであると同時に日本のためでもあるのだ。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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