コラム

「チーム地球」の一員としての日本の5つの優先課題──SDGs週間に考える

2020年09月23日(水)17時35分

さらに今年は、輸入を通じて海外の生物多様性を脅かしていることも「重要な課題」と評価された。つまり、食糧やそれ以外の目的で動植物を輸入するなかで、結果的に海外の生態系に悪影響を与えている割合が高いと評価されているのだ。

また、絶滅危惧種に関するレッドリスト指数も低評価のまま推移し続けている。

公正な資金の流れ

最後に、国際的な資金の流れに関してである。SDGsレポートでは、国内総所得(GNI)に占める政府開発援助(ODA)の割合の低さが3年連続で指摘されている。

西側先進国で構成される開発援助委員会(DAC)では、GNIの0.7%を援助に向けるよう勧告しているが、日本の場合は0.2%にとどまる。金額ベースでいえば、日本の援助額は西側先進国のなかで米・独・英・仏につづく第5位だが、日本よりGDPが小さい独・英・仏よりODAが少ないことに表れているように、その経済規模と照らすと必ずしも国際協力に熱心とはいえない。

Mutsuji200923_6.jpg

(出所)Sustainable Development Goals ウェブサイト. 先進国中、オレンジ線は日本を表す。

これに加えて、金融秘密度スコアの高さも、SDGsレポートで3年連続「重要な課題」と評価されている。金融秘密度スコアとは、銀行の守秘性、企業の情報公開制度、税務当局による納税者情報の把握などによって算出される。いわゆるタックスヘイブンはこれが高いが、日本もそれらに並ぶ水準にある。

シティ大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授は、企業情報の秘匿性を重視するシステムが違法なマネーロンダリングや企業の租税回避の温床になりやすいことから、財政の民主的統制を骨抜きにするばかりか、公正な競争を歪め、貧富の格差を拡大させると指摘する。不公正な資金の流れは、日本ばかりか世界にとっても有害といえる。

ちなみに、日本はイギリスのシンクタンク、タックス・ジャスティス・ネットワークが評価する「金融秘密度指数」の2020年報告でも、世界全体で上から7位の金融秘密大国である。

トレンドを超えて

念のために繰り返すと、日本の評価は全体としては決して低くない。とはいえ、問題がないわけでもなく、ここであげられたのは、指摘され続けてきたものだ。

裏を返すと、これらが改善されなければ今後、世界全体における日本の順位は下がり続けかねない。2017年以降、日本の総合評価は下がり続けているが、これは各国がSDGsに沿った改革を行なってきているからでもある。

日本政府も2018年の「拡大版SDGsアクションプラン2018」を皮切りに、地方自治体、民間企業、大学などに協力を呼びかけている。最近あちこちで目にするロゴの多くは、その考え方に賛同し、普及を図るためのものである。

しかし、企業のなかには既存の取り組みにSDGsのラベルを貼って、いかにもグローバルなトレンドに配慮していますとアピールするにとどまることも少なくない。そうした「格好だけ」を乗り越え、これらの課題に国全体で優先的に取り組めるかは、消費者・有権者のマインド次第ともいえる。日本に暮らす人々がSDGsに関心を向けることは、世界のためであると同時に日本のためでもあるのだ。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 9
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 10
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story