コラム

【スリランカ】IS犯行声明は「次」の導火線になるか―パリから学べること

2019年04月25日(木)14時42分

そして11月13日には、コンサートホールなど3カ所がほぼ同時に襲撃され、約130人が死亡した。この事件では、フランス政府は非常事態を宣言し、その後スポーツイベントなどが中止されるなど影響が拡大した。

これら二つのテロ事件はどちらもイスラーム過激派によるものだったが、注目すべきは実行犯が別々の系統の組織だったことだ。1月の事件ではアルカイダ系の「アラビア半島のアルカイダ」が犯行声明を出したのに対して、11月の事件ではISが「シリアへの軍事介入」を理由にフランスを攻撃したと主張した。

メディア露出を意識する過激派

なぜ、別々の組織が相次いでパリを襲撃したか。そこには、イスラーム過激派同士のレースがうかがえる。

アルカイダとISはどちらもイスラーム世界に渦巻く不満を吸収し、彼らのいう「十字軍連合」を攻撃する点では一致していても、基本的に関係が悪い。イスラーム過激派の「本家」として台頭したアルカイダと、それから分裂した「分家」ISは、勢力を競い合ってきた。

勢力争いにおいて重要なのがメディア露出だ。注目されればされるほど、戦闘員のリクルートや支持者の献金などで有利になる。

この観点からみれば、2015年のパリはアルカイダとISのレースの舞台にされたといえる。つまり、2014年にISが「建国」を宣言して世界の注目を集め、これに危機感を募らせたアルカイダ系がシャルリ・エブド襲撃事件で注目を奪い返し、これに対してISがさらに死傷者の多い大規模テロを「花の都」で行ったとみてよい。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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