コラム

【スリランカ】IS犯行声明は「次」の導火線になるか―パリから学べること

2019年04月25日(木)14時42分

スリランカ同時多発テロ事件の犠牲者の葬儀(2019.4.23) Athit Perawongmetha-REUTERS


・スリランカ同時多発テロ事件で犯行声明を出したISは、アルカイダとライバル関係にある

・2015年にパリで2度も大規模なテロが発生したことは、メディア露出を重視するイスラーム過激派のレースを象徴する

・スリランカ同時多発テロ事件の衝撃が大きかっただけに、アルカイダの活動を活発化させる懸念が大きい

300人以上の死者を出したスリランカ同時多発テロ事件で「イスラーム国(IS)」が犯行声明を出したことは、周辺のアジア諸国で同様の大規模なテロが発生する懸念を高める。そのヒントは2015年のパリにある。

IS犯行声明がもたらす懸念

4月21日にスリランカで発生した同時多発テロに関して、ISは犯行声明を発表。「十字軍連合(アメリカ主導の有志連合)の市民とキリスト教徒を狙った」と主張した。

アメリカ主導の対テロ作戦にスリランカはほとんどタッチしておらず、ここで標的と定められていたのは主に高級ホテルにいた外国人を指すとみられる。

念のために言えば、シャングリラホテルなどに滞在していたのはアメリカ主導の有志連合に協力的な国の出身者ばかりではなく、犠牲者のなかにはトルコ人や中国人の旅行者もいた。しかし、そうしたことはテロリストの論理からすれば大きな問題ではないのだろう。

ここでむしろ重要なことは、ISが犯行声明を出したことそのものだ。なぜなら、ISによる犯行声明はアルカイダによる大規模なテロへの懸念を高めるからである。そのヒントは、2015年のパリにある。

2015年のパリで何があったか

パリでは2015年、大きなテロ事件が2度までも発生した。

同年1月7日、新聞社シャルリ・エブドが襲撃され、12人が銃殺された。この事件では、シャルリ・エブドがイスラームの預言者ムハンマドを揶揄するイラストをしばしば掲載していたことがテロの引き金となったことから、「表現の自由」とテロの関係が注目された。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story