2023年に懸念すべきは円安か円高か
警戒すべきは予想外に円高が進むことではないか...... REUTERS/Remo Casilli
<日本の財政状況に関して悲観方向に偏った報道が、「根拠が薄い円安見通し」あるいは「円暴落論」に影響している......>
昨年の為替市場では1ドル150円台まで円安が一時進み、円買い介入が行われるなど大きく変動した。昨年末から年初にかけてドル円130円台前半で推移しており、2022年間では約14%円安ドル高が進んだ事になる。
「日銀による金融緩和で円の価値が失われる」「貿易赤字拡大や経済衰退が円安を促す」など筆者からみれば根拠が曖昧な議論がメディアで目立った昨年秋口に、極端に円安が進んだ様に思われる。一方、同様の理由で、2023年も円安が続くとの見方も散見されている。
「日本の財政状況が危機的である」「金融緩和が行き過ぎている」などの認識を抱く論者は、「悪い円安」「通貨安で国が貧しくなる」「キャピタルフライトが起きる」などの見方に傾きがちである。実際には、緊縮政策志向が強い経済当局の見解やそれを情報源にする大手メディアの報道は、日本の財政状況に関して総じて悲観方向に偏っている。それらが、「根拠が薄い円安見通し」あるいは「円暴落論」に影響していると筆者は常々考えている。
もちろん、米欧の高インフレとは比べようもないが、日本でも2022年は円安や食料品などの価格上昇が広がったこともあり、インフレ率は上昇し、2%インフレの目標実現に近づきつつある。ただ、これまでの金融緩和政策が、2%物価安定にようやく奏功しつつあるという段階だろう。
つまり、高インフレに程遠い現在の日本で懸念されるのは、円安リスクを唱える論者が論拠とする「財政政策が過大になっている」ことではなく、むしろ緊縮財政政策に早期に転換する事だろう。このため、財政政策への懸念が、大幅な円安を引き起こす可能性はかなり低いと筆者は考えている。
2023年米経済は大きく減速し、ドル安円高期待が強まる可能性
昨年12月後半以降、ドル円と米長期金利の連動性が崩れているが、2023年のドル円の動きは、22年同様にFRB(米連邦準備理事会)の政策動向や米国の長期金利が左右する側面が大きいとみられる。
FOMC(公開市場委員会)メンバーの大多数は、5%超までの利上げを続けることを想定している。米国では景気減速の兆候が増えているが、労働市場の逼迫が和らがない状況が続いている。FRBによる利上げ到達点は近づいているが、高インフレとの戦いをやめるにはもう少し時間がかかるとみられ、春先まではドル高円安に再び動く場面があってもおかしくないだろう。
ただ、FRBの大幅な引締めによって2023年の米経済は大きく減速する可能性が高く、年央までにはFRBの政策姿勢も変わるとみられる。筆者の予想が正しければ、為替市場ではドル高期待が年央までには薄れて、ドル安円高期待が強まる可能性がある。
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