アメリカの銃をめぐるパラノイア的展開
支援者の前で銃を持つジェブ・ブッシュ元フロリダ州元知事。2月21日、大統領選で共和党の指名争いから撤退した。Mary Schwalm-REUTERS
このコラムでは毎回ツィートをキャプチャーして解説を加えていく。キュレーションをお楽しみいただきたい。
初回は大統領選で共和党の指名争いから撤退したばかりの元フロリダ州元知事のジェブ・ブッシュ氏(63)によるツィートだ。なぜか自身の名前が彫られた拳銃の写真をアップし、一言、
「America.」
とツィートした。
英語版のニューズウィーク記事に詳細があるので紹介しよう。
Why Jeb Bush's gun tweet backfired (Newsweek)
選挙活動をする最後の州となったサウスカロライナ州でブッシュ知事は小規模な銃工場で従業員たちと対話集会を開催した。その時に工場から自身の名前と肩書が掘られた45口径の拳銃をプレゼントされた。その贈り物を撮影し、
「アメリカ。」
とツィートしたのだった。ちなみに拳銃の安全装置は外れていることが確認できる。
このツィートは炎上した。炎上した後でブッシュ元知事は、
「地元の銃工場への支持を表明したに過ぎない」
と弁明。だがこの写真はものすごい勢いでミーム化し、おびただしい量のパロディーやコラージュ写真を生み出す。翌朝、タブロイド紙のニューヨーク・デイリーは一面を、
「まぬけな45口径=Dolt .45」
という見出しで飾った。銃規制を進めようとする団体のスポークスマンは、
「ひたすら哀れだ」
とコメント。地元サウスカロライナの工場も、実は本社がベルギーにあることが発覚。つまり、フルボッコにされた。
アメリカでは現在、毎日88人が銃によって殺害されている。これはもちろん、すべての先進国の中でも異常な統計だ。ブッシュ元知事は何を考えていたのだろう?それを解き明かすヒントとなるいくつかの要因がある。
実はオバマ大統領は2016年1月5日インターネットを通じた銃売買に身元調査を義務付けるなど、大統領権限に基づく銃規制強化策を正式発表したばかりだった。銃規制に反対する米国の有力ロビー団体「全米ライフル協会」(NRA)は、すかさず反発する声明を発表し、大統領権限の「職権乱用だ」と批判。国民の武器保有の権利を保障した合衆国憲法修正第2条を守るためにNRAは「闘い続ける」とした。