イスラエルとパレスチナの監督が撮った『ノー・アザー・ランド』が呼び起こす本音と建前の板挟み
2月21日に日本公開の『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』も、パレスチナとイスラエルの映像作家4人が共同で、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区の日常を記録したドキュメンタリーだ。この地に生まれ育ったバーセル・アドラーとエルサレムを拠点に活動するユダヤ人のユバル・アブラハームは、監督であると同時に被写体でもある。
ユダヤ人入植者とイスラエル軍兵士は、パレスチナ住民が暮らす家や小学校、畑や水道などのライフラインを破壊する。自分たちが入植するために。抗議するパレスチナの男性がイスラエル兵士に銃撃されて半身不随となるその瞬間も、4人のカメラは近距離で捉えている。
この状況をどのように世界に伝えるべきか、どうすれば1人でも多くの人に届くのか、バーセルとユバルは必死に対話して模索する。時には衝突し、時には冗談を言い合う。そこに示されるのは希望だ。
ユダヤ人全てが強硬なシオニストではない。むしろ少数派なはずだ。テルアビブ在住の僕の友人に、なぜイスラエルはこれほど無慈悲になれるのかとメールで質問すると、教育とメディアです、と回答してきた。この2つがここ十数年ですっかり変わってしまったとも。でもネタニヤフ政権に反対する人も、(彼女も含めて)まだまだ多くいる。