イスラエルとパレスチナの監督が撮った『ノー・アザー・ランド』が呼び起こす本音と建前の板挟み

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<ドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』はイスラエルの無慈悲な行為を映す一方、監督たちの対話には希望も感じさせる>
イスラエル・パレスチナ問題をテーマにした映画は、ホロコースト(ユダヤ人虐殺)やナチスドイツをテーマにした映画に比べれば圧倒的に少ないけれど、でも相当数ある。ドキュメンタリーならば、イスラエル人監督アビ・モグラビの『ハッピー・バースデー、Mr.モグラビ』があるし、(タイトルだけ挙げるが)『プロミス』『医学生 ガザへ行く』『忘れない、パレスチナの子どもたちを』『ガザ 素顔の日常』『ガザ・サーフ・クラブ』『私は憎まない』など枚挙にいとまはない。
日本人監督のドキュメンタリー映画も、過去に連載で取り上げた後藤和夫監督の『傍観者あるいは偶然のテロリスト』、土井敏邦の『沈黙を破る』『ガザからの報告』、古居みずえの『ガーダ パレスチナの詩』、広河隆一の『パレスチナ1948・NAKBA』など数多い。若松孝二も『赤軍-P.F.L.P 世界戦争宣言』を発表している。
劇映画ではハニ・アブアサドの『パラダイス・ナウ』『オマールの壁』を筆頭に、『ガザの美容室』『D.I.』『テルアビブ・オン・ファイア』『ハッピー・ホリデーズ』など、こちらもまだいくらでもある。
連日のニュースを見ていると、イスラエル国民のほとんどがネタニヤフ政権を支持しているような気分になるが、ここに挙げた作品は全て、パレスチナに対するイスラエルの不当な支配を告発することがベースだ。選んだわけではない。ほぼ全て視点は共通している。監督にはイスラエル人もパレスチナ人もいる。