アラン・パーカー監督『バーディ』の強烈なラストシーンが僕たちを救う
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<好きな監督として名前を挙げるのに、絶対外せないのがアラン・パーカー。大学時代に観た『バーディ』は「すごい映画だ」と笑うしかなかった>
好きな映画は何かと質問されたとき、そのときの気分で答えは微妙に違う。言い換えれば映画への評価は自分の中でいつも揺れていて、そのときの気分や体調だけではなく、もしかしたら天候にだって左右されるのかもしれない。
好きな監督については、あまり揺れない。ただし多い。なかなか絞れない。だから質問されたときは複数の名前を挙げる。でも1人だけ、絶対に外せない監督がいる。
アラン・パーカーだ。
イギリス出身。広告関連の仕事をしていたが、20代後半にプロデューサーのデービッド・パットナムに指名されて『小さな恋のメロディ』(1971年)の原作・脚本を担当し、映画と関わるようになる。その5年後に自ら脚本を書いた『ダウンタウン物語』で監督デビューし、さらに2年後にオリバー・ストーンの脚本で『ミッドナイト・エクスプレス』を発表する。
この映画は衝撃だった。当時の僕は大学生。その後も『フェーム』『エンゼル・ハート』『ミシシッピー・バーニング』などアラン・パーカーの作品は全て観ている。
社会派と形容されることが多いが、『小さな恋のメロディ』やミュージカルの『フェーム』が示すように、実はその定義に収まらない監督だ。
84年にパーカーは『バーディ』を発表する。高校時代の親友だったバーディ(マシュー・モディーン)とアル(ニコラス・ケイジ)は、ベトナム戦争に徴兵される。幼い頃から翔とぶことに異常に執着していた内向的なバーディは、戦場の過酷な体験で心に大きな傷を負い、一言もしゃべらなくなって軍の精神科病院に収容される。
顔面を負傷して前線から戻ってきたアルは自らの治療を続けながら、ベッドの端で鳥のようにうずくまるバーディに面会する。閉ざされた彼の心を再び解放するため、アルは高校時代の2人の思い出を語り続ける。
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