絶対的な悪人も差別者もいない 21年経っても色あせない映画『GO』の若々しさとメッセージ
もちろん今も、北朝鮮や韓国、中国を悪しざまに罵る人はネットに数多くいる。朝鮮学校の前で子供たちを「スパイの子供」と大声で罵倒する人たちもいた。女子高生のチマチョゴリを後ろから切り裂く事件が続いた時期もある。肥大した正義や暴走した善意。悪意とは距離があるはずのこれらの要素が、人をあり得ないほどに凶暴にしてしまう。
差別される側の杉原やかつてのクラスメイトたちも、過剰に深刻にはならない。名前とは何か。記号だ。中身とは違う。うわべで判断するな。監督の行定勲、脚本の宮藤官九郎、原作の金城一紀、そして主演の窪塚洋介、彼らが訴えるメッセージはリアルでそして何よりかっこいい。
『GO』(2001年)
監督/行定 勲
出演/窪塚洋介、柴咲コウ、大竹しのぶ、山崎努
<本誌2022年8月30日号掲載>
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