『東京クルド』が映すおもてなしの国の残酷な現実
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ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<2人のクルド人青年は来日して10年以上が過ぎた今でも「不法滞在者」で、芸能活動の夢も、通訳の仕事も諦めた。作品に焼き付けられたのは、彼らの希望と絶望、夢と挫折、そして日本への憧れと失望だ>
小学生の頃に家族と共に日本にやって来たオザンとラマザンは、今も難民申請を続けるトルコ国籍のクルド人だ。それぞれ18歳と19歳。将来について思い悩む年頃だ。
ドキュメンタリー映画『東京クルド』の主人公である2人が日本に来た理由は、故郷で政府に迫害されたからだ。警察に拘束されて殺害された親戚もいる。来日して10年以上が過ぎるが、いまだに彼らは「不法滞在者」だ。仮放免許可証を与えられてはいるが、定期的に入管に出頭しなくてはならないし、いつ強制的に収容されるかも分からない。
一緒に日本に来たラマザンの叔父のメメットは妻と幼い子供と暮らしていたが、2年前にいきなり収容された。いつ出てこられるのか。そもそも出てこられるのかも分からない。
イケメンのオザンは芸能活動を夢見てオーディションを受ける。語学に興味があるラマザンは通訳養成学校を目指す。オザンは合格し、ラマザンは受験勉強に励む。でも不法滞在者である2人は日本で仕事ができないし、学校側も入学させることを躊躇する。オザンは芸能の仕事を断念し、ラマザンは通訳の仕事を諦めた。なぜ仕事をしてはいけないのか。なぜもっと勉強したいという夢を諦めなければならないのか。
2019年のデータによれば、日本での難民申請処理数は1万5422人で認定者は44人。認定率は0.29%だ。同年のカナダの認定数は2万7168人で認定率は51.18%に達する。ドイツの認定数は5万3973人で認定率は16.05%、アメリカは4万4614人で22.73%だ。
ゼロの数が2つ違う。これが「おもてなし」の国である日本の現状だ。彼らの多くは国の迫害から逃げてきた人たちだ。日本で結婚して子供がいる人も少なくない。それなのに働けない。収容されて強制帰国させられる不安にいつも怯えている。
この連載は、邦画について僕自身が思うことを、選んだ一つの作品を題材にしながら自由に書いてほしい、との依頼から始まった。つまりパブリシティーの要素はかけらもない。編集部からは「褒めようがけなそうがお任せします」と言われている。ただし時折、今だからこそ1人でも多くの人に、この映画をスクリーンで観てほしいと思う作品に出合う。今回はまさしくそうした一作だ。
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