『東京クルド』が映すおもてなしの国の残酷な現実
今年3月、留学のために日本に滞在していた33歳のスリランカ女性が名古屋入管施設で亡くなった。収容されて半年で体重は20キロ減少し、亡くなる直前は車椅子生活となっていた彼女は、適切な医療につなげてもらうことを希望していたが聞き入れられなかった。問題視する世論の高まりを背景に、政府が成立を目指していた入管法改正案は取りあえず廃案となった。しかし法務省や入管関係者は、ほとぼりが冷めたら再び成立を目指すことを明言している。
ただし本作はこうした世相に乗じた映画ではない。日向史有監督はオザンとラマザンを5年にわたって撮り続けている。彼らの希望と絶望を、夢と挫折を、日本への憧れと失望を、作品にしっかりと焼き付けている。
仕事をしたいと訴える彼らに、「帰ればいいんだよ、他の国行ってよ」と入管職員は嘲笑する。その音声を聞いたとき、あなたは気付くはずだ。入管職員は日本国籍を持つ僕たち全ての代弁者なのだと。
『東京クルド』(公開中)
©2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.
監督/日向史有
出演/オザン、ラマザン
<本誌2021年7月20日号掲載>
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