コラム

『絞死刑』は大島渚だから撮れた死刑ブラックコメディー

2020年11月06日(金)11時55分

終盤に明らかになるラスボスの存在を、大島組常連の俳優である小松方正が、まさしく全身で体現する。

断言するが、ほかの誰にもこんな映画は撮れない。映画を通して国家権力と闘い続けた大島渚そのもの。でもチームワークの映画でもある。

フィールドワークを終えたゼミ生たちは、死刑制度について悩み始める。賛成と反対が拮抗する。分からなくなりましたと吐息をつく。

うん。それでよい。大切なのは知ること。知って自分で考えること。そして映画は一人一人の思考や煩悶に、とても重要な補助線を提供してくれる。

NW_MCM_02.jpg『絞死刑』(1968年)
監督/大島渚
出演/佐藤慶、渡辺文雄、石堂淑朗、足立正生

<本誌2020年10月27日号掲載>

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プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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