虚と実が融合する『仁義なき戦い』は何から何まで破格だった
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<フィックスでの撮影が前提だったなか、カメラワークは手持ちブン回し。とにかくリアルな悪党面した俳優陣。現役ヤクザの演技指導──。あまりにメジャーだが、邦画を語るこの連載で避けて通るわけにはいかない>
邦画を語るなら避けては通れないシリーズがある。まあ別に避けてもよいのだけど、邦画というジャンルと自分の今の映画観をセットで語るなら、「仁義なき戦い」シリーズは、やはり避けるわけにはいかない。
......などと書き始めると、映画として評価していないと思われるかな。もちろんそんなつもりは全くない。ならばなぜこんな歯切れの悪い書き方を僕はしているのか。理由の1つはこのシリーズがあまりにもメジャー過ぎるから。関連書籍も数え切れないほど多い。この連載で扱う意味があるのだろうかと思いつつ、その後の日本映画(もちろん僕自身も含めて)に与えた影響を考えれば、やはり避けるわけにはいかない。
1973年1月に公開された『仁義なき戦い』は大きな話題になり、同じ年に2作目と3作目が矢継ぎ早に公開された。1974年にはさらに2作品が作られてシリーズは終了するが、その年末からは「新仁義なき戦い」シリーズが始まる。
今回の原稿を書くために資料に当たって知ったのだけど、「新仁義なき戦い」シリーズ最終作は公開が1976年。つまりたった3年半でシリーズ8本が製作・公開されたわけで、今の邦画の状況ではちょっと考えられない。
大学時代に名画座で初めて第1作を観たとき、まずはドキュメンタリータッチ(当時の自分がそんな語彙を持っていたはずはないが)のカメラワークに驚いた。この時期の映画青年が好んで見る邦画の多くは(黒澤にしても小津にしても溝口にしても)カメラはフィックスであることが前提だった。
『仁義なき戦い』はまさしく(今で言う)手持ちブン回し。特に冒頭の男たちの乱闘シーンは、まるで闇市にいた誰かが偶然撮った映像のようだ。逃げるチンピラと追うヤクザ。それを追うカメラ。撮影の吉田貞次はニュース映像の出身で、実際の商店街で無許可のまま(業界用語でゲリラ)撮影することも頻繁だったという。小型カメラを隠して撮ったこともあったようだ。つまり俳優たちにもカメラがどこにあるのか分からない。こうして虚と実が融合する。
さらに深作欣二監督は、時折スチールを挟み込みながら銃撃シーンを組み立てる。これもリアルだった。とどめは俳優たち。菅原文太に梅宮辰夫、松方弘樹に渡瀬恒彦に金子信雄など大御所だけでなく、川地民夫に川谷拓三、曽根晴美など、とにかくリアルなほどに悪党面の男たちだ。
タイトルもストーリーも奇妙だけど、甘さと苦みの配合が絶妙な『ガープの世界』 2025.01.23
ナチスへの復讐劇『手紙は憶えている』とイスラエルをめぐるジレンマ 2025.01.17
和歌山県太地町のイルカ漁を告発した映画『ザ・コーヴ』は反日なのか? 2024.12.21
統合失調症の姉と、姉を自宅に閉じ込めた両親の20年を記録した『どうすればよかったか?』 2024.12.07
偶然が重なり予想もしない展開へ......圧倒的に面白いコーエン兄弟の『ファーゴ』 2024.11.22
韓国スパイ映画『工作』のような国家の裏取引は日本にもある? 2024.10.31
無罪確定の袴田巖さんを22年取材した『拳と祈り』は1つの集大成 2024.10.19
-
外資系顧客向けシステムエンジニア/システムインテグレータ・ソフトハウス
株式会社リファルケ
- 東京都
- 年収450万円~1,260万円
- 正社員
-
転勤無し/税務マネージャー「東京」年収~1000万円「世界5大会計事務所/外資クライアントメイン/在宅勤務有」
BDO税理士法人
- 東京都
- 年収600万円~1,000万円
- 正社員
-
転勤無し/外資系クラウドシステムの既存顧客担当営業「東京/大手中堅」
株式会社コンカー
- 東京都
- 年収800万円~1,500万円
- 正社員
-
外資製薬会社向けCRMシステムの運用保守支援/最寄り駅から徒歩10分圏内/経験者優遇/データ入力業務あり/年間休日最大125日
株式会社ビーネックステクノロジーズ
- 東京都
- 月給21万2,000円~55万円
- 正社員