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NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグループを中心に急増する「時短サウンド」、その理由とは?
時短サウンドは世界的なトレンドに
実を言うと、曲を短くするのはK-POPのガールズグループに限ったことではない。アップルミュージックで毎日更新される、世界中で最も聴かれている曲のチャート〈トップ100:グローバル〉を見ると、以前よりも短めの楽曲が増えた印象が強い。動画配信サイトやサブスクリプションで曲を聴く機会が多くなった現在、さくっとチェックできるコンパクトなサウンドが国内外を問わず歓迎されるのだろう。しかしながらK-POPのガールズグループにおいてはこの傾向がより強く感じられるのは何故だろうか?
やはりそれはNewJeansのワールドワイドな成功が影響しているのではないかと見ている。彼女たちの2作目のミニアルバム『Get Up』は2023年夏に発売されるやいなや、様々な国のヒットチャートのトップに。アメリカではビルボードのメインチャートで1位に輝いた。このモンスターアルバムに収録された6曲の合計時間は12分10秒。最も短いのはタイトル曲の36秒である。
にもかかわらず、音の情報量は多い。ドラムンベースとラウンジミュージック風のシンセ音でキュートな世界を演出する「Super Shy」、ブラジルの大衆的なジャンル=バイレファンキをとり入れながらエレガントなムードが漂う「ETA」といった風に、過去に流行った音を絶妙のバランスでミックスした"チルなポップス"は、彼女たちの清潔感のあるボーカル&ハーモニーと一糸乱れぬダンス(カルグンム)を加えて唯一無二の輝きを放っている。
ギタリストの活躍がなくなる!?
今やK-POPを象徴する存在となったNewJeans。誰もがうらやむ彼女たちの成功を目の当たりにすれば、ベテラン、中堅、ニューフェイスを問わず、時短サウンドを目指すのは当然の流れだと思う。とはいえ、このあたりの話は確認できるデータがないので、あくまでも個人的な意見として読んでいただければ幸いだ。
「短い曲は聴きごたえがないのでは?」と思う人は多いだろう。昨年、「2022年のグラミー賞のロック系の部門にノミネートされた作品は、いずれもギターソロがなかった」というニューヨーク・タイムズ紙の記事が話題になったが、確かにベーシックな構成のみでギターソロのような遊び(もしくはゆとり)がないサウンドは面白味がなさそうに考えやすい。
ところがK-POPの場合は、その遊びの代わりになっているのがパフォーマンスとビジュアルなのだ。したがって楽曲もステージングの美しさ・かっこ良さをアピールするところを当然のごとく設けるタイプが多くなってくる。昨年デビューしたYOUNG POSSEはダンスがなければ魅力が半減してしまうと痛感するほどにメンバーの一挙手一投足とサウンドの関係が濃密だ。
時短サウンドは世の中のニーズによって生まれたものだ。振り返れば80年代にMTVの登場によって音楽と映像の蜜月は始まり、その影響下で新しく誕生したスタイルやトレンドはたくさんあった。現在はネットとの蜜月によって音楽が再び変わろうとしているが、ネットをうまく利用しながら成長してきたK-POPゆえに、いち早く変化したのもうなずける。今のところガールズグループで顕著な時短サウンドは、程なくしてそれ以外のアーティストにも広がっていくだろう。となると、2024年の韓国の音楽シーンが熱くなるのは必至である。
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