コラム

今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

2024年04月24日(水)14時00分

本国と同じアリーナ規模の公演を実現したIU

 
8年ぶりの来日公演を横浜アリーナで開催したIU。こちらはソウルコンサートのようす 이지금 [IU Official] / YouTube


IUは2008年のデビュー以来、ずっとK-POPシーンの最前線に立ち続けたトップスター。俳優としても次々とヒット作に出演し、こちらでも輝かしい経歴を誇る。当然のごとく自身のコンサートもキャリアにふさわしい豪華なステージが作られ、バックのバンドもダンサーも一流の人材をそろえ、かなり手の込んだ演出を施す。コストも相当かかるに違いない。このような公演はアーティストの出身地だけで、海外では縮小バージョンで行われがちだ。しかし今年3月に行われた横浜アリーナの単独公演は本国とほぼ同じ内容で進行し、2日間で推定2、3万人の観客を集めるほどの成功を収めた。

私も同公演に足を運んだが、他のK-POPアーティスト以上に韓国から来たと思われるファンの比率が高かったように思う。かつては日本では5000人規模の会場が最高だったIUが、より大きな会場で開催したコンサートで満足できる結果を残せたのは、人気度・知名度の上昇とともに、インバウンドの後押しがあったからだろう。

海外ファン前提で来日公演を行うアーティストも

こうした傾向を前提に日本公演を行うケースもちらほら出てきた。ベルギー、ブラジル、インド、アメリカと、韓国出身のメンバーがひとりも在籍していないことで知られるK-POPガールズグループ・BLACKSWANが、6月1日に東京・Veats Shibuyaでファンミーティングを開くが、チケットの公式販売サイトは国内用に加え、会員登録なしで購入できるグローバル用も設けられている。彼女たちのように日本で表立った実績がないアーティストでも海外ファンを呼ぶことで来日イベントを成立させるケースは、今後さらに増えていくに違いない。


リーダーでベルギー国籍のファトゥはK-POPアイドル史上初のアフリカ生まれの純粋な黒人アーティスト。 Blackswan Official / YouTube


インバウンドを意識した来日公演は、K-POPアーティストに限らない。中華圏で活躍するアジアのスーパースター、ジェイ・チョウ(周杰倫)は、4月に単独公演をKアリーナ横浜で開催したが、2万人規模の会場を2日連続で満杯にできたのは、やはり華僑や中華圏に住む人たちのサポートだった。最寄りの駅から会場へ向かう人たちの会話はすべて中国語と言っていいほど。日本人客はほとんどいなかったのではないだろうか。


ジェイ・チョウ(周杰倫)は台湾出身のアーティスト。2022年の年収は約22億元(約451億円)といわれる。 周杰倫 Jay Chou / YouTube

以上のような状況は、本場と同じ演出が味わえる、現地に行かないと見られないタイプのアーティストが来てくれる、チケットの価格を抑えられるケースも少なくないなど、日本の人にとってもメリットが多い。K-POPに代表される海外アーティストの日本公演は、円安でも良いことがあると思わせてくれる数少ないものなのだ。

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story