コラム

今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

2024年04月24日(水)14時00分
韓国のシンガーソングライター・IU(アイユー)

8年ぶりの来日公演を横浜アリーナで開催したIU。こちらはソウルコンサートのようす 이지금 [IU Official] / YouTube

<かつてない海外アーティストの来日公演ラッシュ、その背景とは?>

音楽ライターの仕事にもいろいろある。なかでもライブレポートは特に依頼が多い。「無料で観ることができるなんてうらやましい」と言われがちだが、とんでもない。オープニングからアンコールまで出演者の歌声や動き、一言一句を集中して見聞きして、ひたすらメモを取る。大きな会場ではステージが遠すぎてよく見えない場合もめずらしくなく、ライブハウスでは混み合う客席の中で頭の合間から様子をのぞいて書くときもある。終演後は決まってぐったり。プライベートで鑑賞するのが一番。それが本音である。

いきなり愚痴になってしまって申し訳ないが、K-POPの来日公演はコロナの5類移行後に大小を問わず公演が一気に増えたため、このような取材時の苦労を味わう機会が多くなっているのが実状だ。だが、たくさんの現場をこなしているからこそ分かることもある。K-POPの日本公演と言えば、長い間アイドルがメインだったが、近頃は非アイドル系も充実してきた──。これが直近1年の印象だ。

理由ははっきりしている。日本政府が2023年8月、音楽や演劇などをするために外国人アーティストが来日する際の興行ビザの要件を大幅に緩和したためだ。1日あたりの報酬が50万円以上に及ぶアーティストの場合、以前は滞在できる日数は15日以内だったのが30日以内に。すると長期ツアーも可能になってくる。

また、小規模な会場で行うイベントは、これまでは訪日する外国人アーティストに海外で2年以上の活動経験が必要で、舞台や控室の広さなどにも要件を課してきたが、昨年の改正によって一定の実績がある団体が受け皿になるのであれば、対象者の活動経験や会場の広さなどは問わないことになった。

円安で海外のファンがコンサートのため来日

一連の緩和によってキャリアの浅いニューフェイスをはじめ、非アイドル系のグループやシンガーも比較的楽に来日公演を開催できるようになったわけだが、時を同じくして歴史的な円安でインバウンド(外国人が日本を訪れる旅行)が急増したのも、さらに状況を好転させた。

母国ではチケットの競争率が高くてなかなか観られないアーティストでも日本だったら比較的入手しやすいし、ついでに観光もできる。そんな経緯でやってきた外国人のおかげもあり、日本で充実した大型公演を開催する実力派アーティストが目立ってきた。インバウンドの効果を生かしたと言える最近の例は、韓国のシンガーソングライター・IU(アイユー)である。

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル高官、トランプ氏の人質解放要求を歓迎 ガ

ワールド

ブラジル第3四半期GDP、前期比0.9%増 金融引

ワールド

韓国大統領が戒厳令、国会は「無効」と判断 軍も介入

ビジネス

米求人件数、10月は予想上回る増加 解雇は減少
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 6
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 7
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 8
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 9
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 10
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 9
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 10
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story