コラム

女性向けマーケティングの要諦を「美白」の戦略分析から探る

2017年03月23日(木)15時33分

RyanKing999-iStock.

<日本の化粧品業界最大のテーマである「美白」。P&GのSK-II、資生堂のクレ・ド・ポー ボーテという2ブランドの戦略分析から見えてきたものとは>

美白は日本の化粧品業界最大のテーマである。特に春夏のシーズンは美白化粧品にとって最大の商機になることから、例年、女性美容誌では2月後半に発売される4月号、一般女性誌では3月後半に発売される5月号において、美白が化粧品カテゴリーでの中心テーマとなっている。

日本人の女性が「白い肌が美しい」という価値観をもつようになったのは奈良・平安時代にまで遡ると言われている。美白化粧品の目的には、色素性病変を改善すること、皮膚の色を明るくすること、肌の透明度を上げることなどがあり、最近では美白は女性の自己表現の手段にもなってきている。

【参考記事】インド男性に広まる「美白」ブーム

そんな化粧品業界最大のテーマである美白に対しては、各社とも、毎年のように新商品を投入し、訴求ポイントを戦略的に練り、マーケティングにより差別化を図っている。そこで本稿では「定番」となっている高級ブランド、最高級ブランド2社の戦略分析を通じて、ブランディングや女性向けマーケティング戦略の要諦について考察していきたい。

SK-II by P&Gプレステージ

「SK-II ジェノプティクス オーラエッセンス」は、P&Gの子会社である P&Gプレステージ(旧P&Gマックスファクター)の商品である。

この商品は、美白化粧品の中でも「定番」の1つとなっており、特に「評価の高い美白化粧品を選びたい」という消費者層に支持されている。

ブランド戦略としてSK-IIを語る上で重要なのは、P&Gのグループとしてのブランディングポリシーである。

ブランド戦略の分類の1つには、多くの大手日本企業のように企業名を商品展開においても重視するコーポレートブランドと、多くの大手欧米企業のように企業名は企図して外して商品自体のブランドを全面に打ち出していく商品ブランドがある。

P&Gは商品ブランド重視の代表的な企業であり、P&Gが展開するブランドには、アリエール、パンパース、ファブリーズ、パンテーン、ジョイ、マックスファクターなどがある。

P&Gがコーポレートブランドと商品ブランドを戦略として峻別しているのは、例示として言うと、「高級美白化粧品であるSK-IIがパンパースと同じブランド」では、対象消費者に対して訴求ポイントが大きく外れてしまうからである。

もっともP&Gでは、P&Gグループ全体としての共通の価値観となるコアバリューを極めて重視している。消費者志向、誠実さ、信頼などから構成されているコアバリューがグループ全体で共有されているからこそ、P&Gでは、1つひとつの商品がブランド化し、コーポレート全体としてもブランド価値の高い企業グループになっているものと考えられる。

プロフィール

田中道昭

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ミッションの経営学』など著書多数。

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