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えっ? 中国共産党が北ミサイルより恐れる「郭文貴」を知らない?
なぜ、この大富豪が中国から逃げ出さなくてはならなかったのか。2015年1月、馬建・国家安全省次官(当時)が紀律違反違法行為の容疑で失脚するが、馬こそが郭の後ろ盾であったと中国メディアは報道している。2014年から米国に滞在していた郭は以後、中国には帰れない流浪の身となった。
中国は政治の国と言われる。どんな大富豪も中国政府には逆らえない......はずだった。ところが、郭は米国からインターネットを通じて孤独な戦いを始める。それが「爆料」(暴露)だ。
郭は、習近平総書記が敵なのではない、ターゲットは中国共産党の最高指導陣である常務委員の1人、王岐山・中国共産党中央規律検査委員会書記だと明言。謹厳実直なイメージで反腐敗運動を率いる王自身が私腹を肥やしている、複数の隠し子を持ち莫大な資産を保有している、ハリウッド映画にもしばしば出演する大物女優と関係を持っていたなど、次々と暴露を始めたのだ。
王岐山は1948年生まれの69歳。「七上八下」(党大会時点で68歳に達していた場合には引退)という、鄧小平が定めた慣習に従えば、10月18日から始まる十九大(中国共産党第19回党大会)で引退するはずだ。しかし、習近平の懐刀として絶大な権力を握る王ならば留任は当然とささやかれてきた。そのムードは郭の暴露によって大きく変わりつつある。
【参考記事】「共産党の闘争は文革の再演」
30年間、民主活動家たちは成果を上げられなかったが
郭の「爆料」は爆発的な注目を集めているが、その評価に対しては真っ二つに割れている。若者に多い否定派は「暴露の内容はまるでスパイ小説のよう。現実離れしている。ウソも多い」「耳目を引く話やもったいぶった言い方で注目を集めているだけだ」と疑いの目を向ける。
実際、彼の暴露には不正確なものも含まれているだろうが、全てを虚偽と否定することは難しい。例えば中国の大手航空会社、海南航空が王が私腹を肥やす手段になっているという暴露だ。
海南航空は否定したが、その後、経歴不詳の「神秘の投資家」が大株主にいることが判明した。これだけでも怪しさ満点だが、その後の展開はさらに不可思議だ。郭の暴露後、この神秘の投資家は保有株を慈善団体などに贈与したのだ。その結果、中国で最も成長力のあるこの航空会社は慈善団体が筆頭株主となっている。
この一事をもってみてもわかるとおり、郭の暴露が現実離れしているのではない。中国の現実こそが現実離れしているのだ。
郭を批判する者は「中国に荒唐無稽な現実があるとしても、批判者までもがそれに乗っかる必要はない」と言うが、では彼らは中国に何らかの変化をもたらすことはできたのだろうか。米国や欧州には無数の中国民主化団体があるが、天安門事件以来約30年間、亡命した民主活動家たちは内輪で盛り上がるだけで何の成果も上げることはできなかった。一方、郭はたった1人でこのムーブメントを作り上げたのだ。
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