コラム

中国政府系グループによる「史上最大の富の移転」...トランプ次期政権の対抗策は?

2024年12月24日(火)17時15分

中国政府系グループによる「史上最大の富の移転」

2024年、アングロサクソン系の英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」は、「Volt Typhoon」と、中国がAIを使いながらハッキング攻撃を繰り広げていることに対して警告を発した。中国のハッカーは主に、防衛産業基盤を重点的にターゲットにし、例えば、国防総省と契約している企業のネットワークを1年間で20回も侵害することに成功している。もっとも、それ以外にも多くの標的に対して侵入を成功させており、おそらく多くが未検出のままだと考えられる。

私が運営するCYFIRMAのレポートでも分析したことがあるが、中国政府系サイバー攻撃グループは大規模な産業知的財産(IP)を窃取するオペレーションを実行しており、多くの人がこの動きを「史上最大の富の移転」とすら呼んでいる。

「トランプ2.0」により、現実に知的財産がアメリカから中国に渡るのを減らし、アメリカが対中国の関税を大幅に引き上げることになれば、中国政府はサイバースパイ活動を活発化させ、サイバー攻撃という水面下の取り組みを倍増させる可能性が高い。そもそも中国はサイバー攻撃を国家運営や統治の手段として利用する国として知られており、すべての主要国を合わせても、中国ほどの大規模なハッキング作戦を展開している勢力はない。

特に、ハイテクなどをはじめとする中国政府が力を入れている開発分野に該当する業界は、自分たちの優位を保つために、新しい脅威を継続的に監視して得られる予見的なリスク情報を使い、差し迫った攻撃やリスクを回避するといった対策が求められる。例えば、外部の脅威情勢管理プラットフォームといった包括的なソリューションが急務である。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏がゼレンスキー氏を再び批判、「もっと感謝

ワールド

ウクライナは和平実現に実質外交、ゼレンスキー氏「米

ワールド

トランプ氏の和平への決意伝える、国務長官がチェコ外

ワールド

イスラエルがガザ南部攻撃、2人死亡 停戦合意の崩壊
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Diaries』論争に欠けている「本当の問題」
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 5
    バンス副大統領の『ヒルビリー・エレジー』が禁書に…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 8
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 9
    世界最低の韓国の出生率が、過去9年間で初めて「上昇…
  • 10
    生地越しにバストトップがあらわ、股間に銃...マドン…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 8
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 9
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 10
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story