コラム

日本がずっと放置してきた「宿題」...「文化」が変われば「防犯対策」も変わる

2024年01月12日(金)11時10分

「失われた30年」から脱却するには、文化を「画一性」から「多様性」に転換しなければならない。長期的に見れば、「画一性」が「多様性」に勝ったことはない。しかし、「多様性」といっても、それは、上辺だけの「多様性」であってはならない。それはすでに学校や企業で、いやというほどやっている。例えば、SDGsも「流行語大賞」にノミネートされるほど言葉自体は認知されたが、身体障害者用トイレの男女別すら、未だに実現していない。これは「画一性」の最たる例である。

求められるのは、パフォーマンスとしての「多様性」ではなく、「違い」を保証する「多様性」だ。多くの人は勘違いしているが、「違い」を認めることが平等で、「違い」を認めないことが差別である。言い換えれば、他人の「ものさし」を認めることが平等で、自分の「ものさし」しか認めないことが差別だ。

そうした真の「多様性」を実現するのがディベートである。ただし、過去と同じ失敗を繰り返さないため、導入にあたっては注意が必要だ。まずは、学校や職場で、課題への賛成理由や反対理由を、できるだけ多く列挙することから始めてみてはどうだろう。ありったけの「ものさし」を机に並べてみるのだ。それこそが「多様性」の景色なのだから。

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プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページとYouTube チャンネルは「小宮信夫の犯罪学の部屋」。

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