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広域連続強盗に見られる「ピンポイント強盗」 対策の一丁目一番地は?
犯行グループはあの手この手で家のドアを開けさせようとする(写真はイメージです) liebre-iStock
<犯行グループは振り込め詐欺から広域強盗へシフトした可能性が高く、それは「高いコスパを期待できるから」と犯罪学者の小宮信夫氏は述べる。なぜ今なのか。どうすれば被害を防げるか>
各地で広域強盗事件が相次いで摘発されている。報道によると、フィリピンを拠点にしている指示役が、SNSの「闇バイト」で実行役を集め、スマートフォンでターゲットの家を指示していたという。こうした報道を分析すると、次の特徴が浮かび上がってくる。
一連の広域強盗事件は、振り込め詐欺から強盗へのシフトを意味している可能性が高い。なぜなら、犯行グループは広域強盗事件が起きる前からだましの電話をする「かけ子」や、被害者から金品を受け取る「受け子」をSNSで募っていたからだ。
それが強盗へシフトしたのは、強盗の方が高いコストパフォーマンスを期待できるからだろう。
振り込め詐欺では、だまされた人に出会うまで多数の人に電話をかけなければならない。さらに、だまされた人が出ても金を受け取るために面倒な作業が生じる。つまり、犯行のコストが高い。
一方、強盗事件のコストは手口により異なる。伝統的な強盗では、窓や玄関を無理やりこじ開けるのでコストが高い。しかし、宅配業者などを装って玄関を開けさせる「ピンポイント強盗」では、犯行のコストは低い。一連の広域強盗事件の多くはピンポイント強盗である。
なぜ「ピンポイント強盗」が起きるのか
「ピンポイント強盗」と呼ぶのは、犯行グループが、あらかじめ「多額の金品がある家」を知っていて、ターゲットをピンポイントに絞っているからだ。伝統的な強盗では、家に入ってみなければどのくらいの金額が手に入るか分からないが、ピンポイント強盗では、どのくらいの金額が手に入るか事前に分かっているのである。
このようにピンポイント強盗は犯行のコストが低い。しかし、振り込め詐欺に比べてリスクは高い。振り込め詐欺では、金の受け取りに出向くまで捕まることはほぼないが、強盗は、逮捕される確率が高く刑罰も重い。もっとも、リスクが高いのは実行役だけで、指示役は安全圏にいることが多い。
要するに、ピンポイント強盗は犯行グループの上層部にとっては犯行のコストとリスクが低い。それゆえ、振り込め詐欺からピンポイント強盗へのシフトが起きるのである。
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