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広域連続強盗に見られる「ピンポイント強盗」 対策の一丁目一番地は?
ピンポイント強盗は、指示役による犯行の需要と実行役による犯行の供給が一致したときに発生する。前述したように、コストパフォーマンスの高さは、どちらかと言えば指示役の事情だ。これに対し、実行役の事情は経済的困窮である。借金返済などで金に困った者が高額報酬につられたケースが多い。
その背景には、「失われた30年」がある。「世界競争力年鑑」によると、日本の2022年の順位は34位である。筆者がケンブリッジ大学に留学した時期は1位だったので、日本は衰退の一途をたどってきたわけだ。
これでは、経済的に追い込まれた若者が、罪悪感もなく高度経済成長期にビジネスで大儲けした高齢者から金品を奪うのも一つの流れになってしまう。
そう考えると、いくら道徳を説いても、「あくどい商売をしてきた人から奪って何が悪い」「つけを払わされているのは我々」「公平を取り戻すためにやっている」といった反論が返ってくるだけだろう。むしろ、「厳しい刑罰や冷たい社会的排除を受けることになるから、犯行のコストは極めて高い」と利害打算に訴えた方が、ピンポイント強盗に手を染めなくなるかもしれない。
アリゾナ大学のトラヴィス・ハーシも、犯罪へと走らない最も重要な要素は、「特定の行為により被るかもしれないすべての損失を考える傾向」だと主張している。
犯行グループは二つの方法でデータ収集
前述したように、ピンポイント強盗は、「多額の金品がある家」という情報がなければ成立しない。したがって、「個人情報を知らせない」が対策の一丁目一番地になる。
もちろん、家に入らせない対策を貫徹できれば強盗を防げる。しかし、犯行グループはあの手この手で家のドアを開けさせようとするので貫徹は難しい。この点が空き巣との違いだ。ワンドア・ツーロックにしたり、強化ガラスを設置したり、警備会社と契約したりしても、住人自らドアを開けてしまったら何にもならない。
犯行グループがピンポイント強盗の基礎データを収集するには二つの方法がある。
第一は、振り込め詐欺でだましの電話をかけるわけだが、その際に個人情報を聞き出す「ヒアリング」である。「かけ子」は、電話相手に自分を信頼させるために、プライベートな話題も持ち出すが、その過程で「多額の金品がある家」という情報が出てくる可能性がある。
これは、「アポ電強盗」(アポイントメント電話に基づく強盗)と似ているが、電話した家で強盗を働くことを目的としているのではなく、ターゲットリストを作成するという色彩が強いので若干異なる。つまり、アポ電強盗をするつもりがなくても、詐欺をしようとして、偶然にピンポイント強盗に必要な情報を得ることもあるのだ。
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