ロシアの「師団配備」で北方領土のロシア軍は増強されるのか
北方領土の「海軍」化?
この際、所属が陸軍から海軍に変わるということも考えうる。
近年のロシア軍は、海軍を中心とした国境防衛体制を採用してきた。
つまり、国土の沿岸部分では海軍を中心とする陸海空統合部隊(海軍自身が地上部隊や航空部隊を保有する場合もあれば、海軍が陸空軍を指揮する場合もある)を編成して防衛にあたるという体制である。
バルト海の飛び地カリーニングラード、北極圏、カムチャッカ半島などはこうした防衛体制の典型例であるが、北方領土を含むクリル諸島でも同様の防衛体制が敷かれる可能性は考えられよう。
そもそもロシアが北方領土を含むクリル諸島に部隊を配備しているのは、それらの島自体を防衛するためというよりは、島々を固守することによってその内側にあるオホーツク海を防衛するという側面が強い。
オホーツク海は核抑止力を担う弾道ミサイル原潜のパトロール海域であり、将来の北極海航路の出入り口でもあるためだ。
昨年、ロシアが国後島及び択捉島に新型地対艦ミサイル(これも太平洋艦隊所属)を配備したことについても、対日牽制というよりはこのような文脈から理解する必要があることは以前の拙稿で述べたとおりである(「ロシアが北方領土に最新鋭ミサイルを配備 領土交渉への影響は」)。
ロシア国防省はベーリング海峡に臨むチュコト半島にも太平洋艦隊所属の1個海軍歩兵師団を配備する計画を昨年明らかにしているほか、クリル諸島中部のマトゥワ島にも海軍の拠点を設置するための調査団を2015年から派遣している。
このようにしてみると、ショイグ国防省の言うクリル諸島への師団配備は、同諸島全体の防衛体制を海軍中心へと再編する動きの一環である可能性が考えられよう。
注目される日露2+2
もちろん、すでに述べたように、ショイグ国防相がいう新たな師団が北方領土に配備されると決まったわけではない。
クリル諸島の防衛強化という意味でいえば、現在は地上部隊の配備されていないほかの島が配備先という可能性もありえよう(それも師団は一つの島には大きすぎるので、複数の島に分散配備されることになると思われる)。
ただ、この場合は基地インフラなどを一から再建する必要があり、年内の配備はかなり難しそうだ。
日本政府は3月20日に東京で予定されている日露外交防衛閣僚会合(2+2)でロシア側に師団配備の真意を問いただすとしており、まずはここでのロシア側の回答が注目されよう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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