コラム

次期英首相最有力、ボリス・ジョンソンは国をぶっ壊しかねない問題児

2019年06月19日(水)20時30分

「ジョンソンは、もうだめだ」「これで首相になる可能性はゼロになった」。誰もがそう思った。

しかし、内相が転じて党首・首相になったテリーザ・メイはジョンソンを外相に抜擢。ひとまず、ジョンソンは政治家として息を吹き返した。

ところが、昨年7月、メイ首相による離脱協定案が気に入らず、抗議の辞任をしてしまう。「離脱強硬派」として知られるようになったジョンソンは、テレグラフのコラムを通じて、「自分なら、本当の離脱を実現できる」と主張するようになった。

「先の党首選で引き下がったジョンソンが、また犬の遠吠えか」。そんな思いを持つ人も多かった。

しかし、ジョンソンは次期首相の座を目指し、強力なキャンペーンチームで周囲を固めて虎視眈々と次の出番のために準備していた。

圧倒的な人気を誇る

保守党の党首は以下のようにして選ばれる。

立候補者が複数出た後、保守党議員らによる数回の投票で、二人に絞り込む。

全国の保守党員約16万人が、二人のうちいずれかに投票する。党首が決定するのは7月末の見込みだ。

boris190619_3.jpg

与党保守党の党首候補の中で最有力視される、ボリス・ジョンソン議員の支援サイト「バック・ボリス」(ウェブサイトより)

先週、議員らによる最初の投票があったが、11人の立候補者の中でトップはジョンソン候補(114票)。2番目のジェレミー・ハント外相は43票、ジョンソンの半分以下だ。2回目の投票は18日。ここでもトップはジョンソン(126票)。2位以下はハント(46票)、ゴーブ環境相(41)、ローリー・スチュアート国際開発相(37票)、サジ・ジャビド内相(33票)の順であった。

なぜこれほどの差をつけているのか?

一つは、ジョンソンの保守党内での圧倒的な人気だ。イギリスの政界でファーストネームの「ボリス」で呼ばれる議員はジョンソンしかいない。知名度が抜群なのだ。

キャラクターとしての「ボリス」は、エリート層で頭が良く、それなのに気取っておらず「ジョークを飛ばす面白い奴」だから、どんな社会層の人ともつながることができる。

おっちょこちょい気味で、ロンドン市長時代にはワイヤー滑降を試みて宙吊りになったままのぶざまな格好を披露したが、これもまた「笑える」エピソードとして好感につながってゆく。

国民の間には「保守党が約束した離脱を実行してほしい」という強い思いがあり、離脱強硬派のジョンソンはぴったりだ。

ロンドン五輪の際の輝かしい功績も人々の記憶に残っており、「ボリスなら、きっと何か楽しいことをやってくれる」、「イギリスを一つにまとめてくれるだろう」という大きな期待感がある。

保守党員にとっては、最も重要な要素である「彼が党首なら、選挙に勝てる」ことも大きな要因だ。

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story