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次期英首相最有力、ボリス・ジョンソンは国をぶっ壊しかねない問題児
嫌う人も多い
しかし、ジョンソンを嫌う人も多い。
特定の宗教や人種に対する差別的暴言を述べたことがあり、「口が軽い」のが欠点だ。
近年の例だけを挙げても、国民投票のキャンペーン時にはオバマ米大統領(当時)には「ケニア人の血が入っている」から「大英帝国を毛嫌いしている」と大衆紙サンのコラムに書いた。また、イスラム教徒の女性が目以外の全身を覆うニカブを着用する姿を「まるで郵便ポストのようだ」と評したこともある。
トルコのエルドアン大統領を侮辱する発言をしたコメディアンを擁護したり、現在イランにスパイとして拘束されている英国女性について不適切な発言をしたりなど、問題発言が少なくない。
今回の党首選でのジョンソン支持に最も貢献したのは、ジョンソンの問題発言・暴言がこれまでに発覚していないこと。キャンペーンチームの戦略は「極力本人を表に出さないこと」だった。出れば問題が起きるからだ。ほかの候補者がテレビに頻繁に出演するのとは対照的に、ジョンソンは新聞媒体のインタビューに集中。放送媒体では失言が出ても、止めることができないが、新聞であればコントロールできる。党首選のテレビ討論の第1回目は欠席し、第2回目にのみ参加した。
政治的には、ロンドンの市長としてLGBT支援などリベラルな面を見せたかと思うと、ブレグジットを提唱し、「英国を国民の手に取り戻そう」と呼びかける内向きの面も見せる。離脱運動を率いる際には、「残留派を主導するのか、それとも離脱派か」を散々迷った末に、離脱派を選択したのはライバルと目するキャメロンが残留派だったためと言われ、一体何を本当には信条とするのか、本音部分が見極めにくい政治家だ。
フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、サイモン・クッパーが言うように、「オックスフォード大学の出身者が、自分の野心を満足させるために首相を目指している」(4月、ロンドンのイベントで)ように見えてしまう。
ジョンソンは今のところ、EUと約束した離脱予定日(10月31日)には「必ず離脱する」と宣言している。下院で3回も否決された離脱協定案の代案をEUと交渉する、とも。EU側は「離脱協定案の再交渉はしない」と再三、繰り返しているのだが。
筆者自身は、交渉決裂で、何の協定もないままの離脱という可能性が増していると思う。
周囲を実務的で有能なチームで固めれば、ジョンソン首相の下でもイギリスは何とか回っていくかもしれない。それでも、「自分の野心を満たしたいだけで首相になった」という疑念は消えないのではないか。
(在英ジャーナリスト、小林恭子)
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