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ウイグル問題で「人権」から逃げるユニクロの未来
ウイグル発言が炎上した柳井社長だが Issei Kato-REUTERS
<ウイグル問題の発言でユニクロの柳井社長が炎上した。確かに激化する米中冷戦の中で、ウイグルの人権問題は国際政治における覇権争いの象徴になっている。しかし、何の戦略もなしにニュートラルであろうとすれば、卑怯者とそしられるだけだ>
ユニクロを展開するファーストリテイリング社の柳井正会長兼社長が4月8日、決算発表の記者会見で、ウイグルの綿花使用と強制労働問題に関する質問に対して、「人権問題というより政治問題なので、ノーコメント」と発言し、SNS上で批判が殺到した。
中国の新疆ウイグル自治区における「ジェノサイド(大量虐殺)」問題は現在、最大の国際関心事の一つになっている。4月16日に行われた菅義偉首相とバイデン大統領の首脳会談では、「香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有」することが共同声明に明記された。
こうした国際環境の中で、ユニクロが「ウイグルの人権問題に目をつぶり中国市場でのビジネスを優先させるのではないか」という疑念を生じさせたことが批判の背景にある。実際に、2021年8月期第2四半期決算短信によれば、同社の売上のうち25.8%を中国大陸に香港と台湾を加えた広義の中国市場を指す「グレーターチャイナ」が占めている。
柳井会見翌日の9日、フランスの市民団体がウイグルにおける強制労働と人道に対する罪の「隠匿」の疑いで、ZARAを展開するインディテックス社(スペイン)、靴メーカーであるスケッチャーズ(米)、SMCP(仏)と並んでユニクロをフランス当局に告発した。
EU域内で広がった「人権」への共感
欧州連合(EU)は3月22日、米英カナダ3ケ国と協調して中国に制裁措置を発動したが、1989年の天安門事件で武器禁輸に踏み切って以来32年ぶりの対中制裁だ。今回のユニクロ告発はそうした政治的動向と無関係ではない。中国側は即座に欧州議会議員らを入国禁止とする対抗措置を発表した。
欧州での中国に対する見方は今、一変しつつある。習近平政権が2015年に「中国製造2025」を発表した当初は、「製造強国」を目指す中国を市場および調達・製造委託先として歓迎する向きが一般的だった。米トランプ政権が国防権限法等に基づいてファーウェイ等の中国企業を名指しする輸出入禁止措置に踏み込んでもなお、EUは政治と経済の「分離」策を取り続けようとした。
しかし、中国は通商及び技術の分野だけでなく地政学的な優位への志向を隠そうとしなくなる。西沙諸島や尖閣諸島などへの海洋進出を強めるとともに、2020年6月には香港国家安全維持法を成立させ市民と学生の弾圧を始めると明らかに風向きが変わった。2020年7月のポンペオ国務長官演説が独裁主義に対する敵対姿勢を明確に打ち出したあたりから、EU域内でアメリカに呼応し、中国が抱える香港、ウイグル、チベットなどの政治問題を「人権」弾圧という普遍的な問題として理解する動きが加速化した。
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