コラム

英防衛メーカーが砲弾生産を「16倍に増産」で起きること...「戦時体制」ロシアへの備えの本気度

2025年04月22日(火)20時17分

短期的にはウクライナ支援が最優先

英シンクタンク「欧州改革センター」のルイジ・スカッツィエーリ研究員は「ウラジーミル・プーチン露大統領が戦時体制を整えているのに対して、欧州の防衛産業は装備供給面で速度・量とも不十分。この遅れを取り戻すため、EUは支出拡大と制度改革を急いでいる」と解説する。

短期的にはウクライナ支援が最優先課題とされ、大規模な支出増が潜在的な侵略戦争を抑止するのに不可欠と位置付けられる。EUは財政規律を一時停止して国防費を増やすことで6500億ユーロの追加支出を見込む。残り1500億ユーロはEUの低利融資で賄う計画だ。

スカッツィエーリ氏は「8000億ユーロは象徴的な数字で、実際の支出拡大は限られる可能性が高い。最大の課題は各国の協調をどう促すか。EUは今後より強い協力インセンティブを設計しなければならない。欧州の安全保障の未来は加盟国の決断にかかっている」と指摘する。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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