コラム

トランプ大統領のパリ協定再離脱、「大した影響はない」と専門家...米国は「老大国」に転落か

2025年01月28日(火)20時20分

グリーン経済は世界のGDPの10%に相当

マスリン教授によると、グリーン経済は年間10兆ドル以上、世界の国内総生産(GDP)の10%に相当する規模に成長している。米国でも化石燃料産業の雇用は30万人止まりなのに対して、グリーン経済の雇用は少なくとも1000万人にのぼっている。

「経済成長と雇用創出を望むのであればグリーン経済への投資は不可欠だ。政治的にも経済的にも化石燃料の時代は終わりに近づいている。化石燃料がエネルギー源として使われなくなるのはいつかではなく、いつなのかという問題なのだ」(マスリン教授)

レディング大学気候・正義研究センター所長のクリス・ヒルソン教授は「トランプ氏は実際にはほとんど影響を与えないかもしれない。再離脱も国際外交上、以前のような影響力を持たないだろう。すでにほぼ織り込み済み。米国抜きで他の国々は脱炭素化を継続する」と語る。

スペインの生態学研究・林業応用センター(CREAF)のアリシア・ペレス・ポロ氏は「パリ協定は第1次トランプ政権においても強靭であることが証明された」と強調する。市場と経済は脱炭素化に向かっており、ホワイトハウスに誰が座ろうと止めることはできない。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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