コラム

英国史上最悪の「国家的レイプ」事件に「英首相が加担した」と、イーロン・マスクが糾弾する理由

2025年01月07日(火)20時11分

児童性的虐待・搾取は世界中に広がる病理

マスク氏が英国の国家的スキャンダルを執拗に蒸し返すのは移民規制の強化を唱えるトランプ氏の政策を支持する世論を西側諸国に広げたいからなのだろう。

児童性的虐待・搾取を防げなかったのは英国政府が戦後の労働力不足を補うため大量の移民を受け入れながら問題に目をつぶってきたことが背景の一つにある。マスク氏の指摘は短絡的で扇情的だが、背景に長年にわたる英国政府の不作為があったのは間違いない。

イヴェット・クーパー英内相は、児童性的虐待を隠蔽したり報告しなかったりした者は今年導入される新しい法律の下で職業上または刑事上の制裁を受ける可能性があると表明した。英国の闇は多文化主義という仮面の下、覆い隠されてきた。その罪は重い。

しかし児童性的虐待・搾取は英国社会だけでなく世界中に広がる病理であり、マスク氏のようにスターマー氏や労働党政権を攻撃するだけでは何の解決策にもならない。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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