コラム

キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない」と皇太子妃の伝記作家 「家族第一の謎めいた人」

2024年09月11日(水)19時10分

ケイトは今後、英国の君主制にとって非常に重要な人物になる。新しい王室、新しいやり方への接着剤になる。ウィリアム皇太子とケイトのもとでの君主制が方向転換を迫られることは間違いない。

若い世代の人たち、私の息子の世代は君主制について、私の母や私の視点とは全く違う見方をしている。彼らにとっては選挙で選ばれたわけでもない国家元首、生まれながらにしてそこにいる国家元首を持つという考えはとても奇妙なことなのだと思う。

王室は当たり前のことを当たり前だと思ってはいけないということを自覚しなければならない。ケイトとウィリアム皇太子がプライバシーを守りながら活動しようとする姿は非常に難しく微妙なバランスだ。とはいえ、最も重要なのはケイトの健康だ。

ケイトのビデオメッセージの中でそのことが非常に明確になっている。今後12カ月の間に劇的な方向転換が見られるとは思えない。クリスマス後にはケイトを見る機会は増えると思うが、フルプログラムではなく、一部の露出になる。それはおそらく妥当だと思う。

私たちは皆、キャサリン皇太子妃のことをケイト・ミドルトンと呼び続けている。健康は個人の領域だ。国王でさえがんの種類について具体的なことは話していないし、それ以上のことはもう分からない。タフな時間を過ごしてきた彼女はかなり丈夫だと思う。

露出という点で彼女のカムバックには細心の注意を払い、彼女がそれに対処できるようにし、過度なストレスを与えないようにしなければならない。ケイトはそのまま仕事に戻れるわけではない。もしそれを期待しているのであれば、人々は失望すると思う。

──21世紀の王室はどうなって行きますか。

ケイトは賢い女性だ。自分の考えを持っている。王族は絶大な特権を持って生まれてきた。彼らはキャリアの選択について心配する必要はない。生活のために何をするのか、住宅ローンを払うために何をするのか、ケイトは他の王族と違って普通の生活を理解している。

これから王位の世襲に疑問を抱く新しい世代に移って行く。新労働党政権の下で世襲貴族は貴族院(上院)から追放されようとしている。そのピラミッドの次の段階が君主制だ。英連邦王国のオーストラリア、カナダ、ニュージーランドでは今後20年の間に疑問視されることになる。

故ダイアナ元皇太子妃が2人の王子をどんなに立派に育てたとしても結局のところ、彼らはメディアを意識し、非常に特権的な人々だ。ウィリアム皇太子は、コーンウォール公領から毎年2500万ポンド(約46億5700万円)を手にしている。

彼はあなたや私と同じように苦労したり、考えたりすることはない。チャールズ国王は過渡的な君主になるだろう。在位15年なら90歳近くなる。もし国王がそんなに長く在位するのであれば、次の世代はどうなるのだろうと考える人がたくさんいるだろう。

ウィリアム皇太子はあれをやろう、これをやろうとするのを私たちは見てきた。ケイトは早期教育の問題に取り組んでいる。次の王妃になるまで、おそらくその先も彼女の主な課題になる。5歳以下の幼い子どもやホームレスの生活を改善しようとする人を批判することはできない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story